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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

.上腕二頭筋 1)

上腕二頭筋:biceps brachii】

上腕二頭筋は、長頭と短頭に分かれるが、
長頭腱炎やSLAPなど長頭が着目されることが多い。

<長頭腱の解剖的特徴>
・12時付近で関節唇と肩甲骨関節窩上方に線維を出して結合。
・長頭腱付着部は関節窩上縁より約5mm内側に位置し、
 関節軟骨に覆われている。

・reflection pulleyで走行を変えて、
 結節間溝を通過(Gerber-2000) 。
・烏口上腕靭帯の下方で腱板疎部を走行 。

・内転位から外転位までに、結節間溝で約2.5-3.8cm移動(Hitchcoch-1984)。


<長頭腱の機能>
1)骨頭の安定性
 ①上方
 ・上方偏位を押さえるdepressorとしての作用
 (Dines-1982、Warner-1995)。
 ・上方関節唇を持ち上げることで骨頭の上方移動を抑え、
  GHJの安定化に寄与 。
 
 →滑走不全により骨頭に対するdepressorが減弱し
  骨頭が上方移動する。
 
 ②下方・
 ・長頭に負荷をかけると上腕骨頭は下垂位において下方に制動。

 ③前後方向
 ・前後方向の安定性に寄与(Itoi-1994)。
 ・長頭に負荷をかけると上腕骨頭は下垂位において
  前方、後方に制動。

 ・外転-外旋におけるanterior stabilizer。
 ・外転-外旋位においても前方へ制動効果が認められる。
 
 ④外転時
 ・特に外転時に上腕骨頭を関節窩に押し付ける。

 ⑤外旋位
 ・外旋位では緊張が高まるが、内旋位では弛緩傾向にある
 (信原-2001) 。
 ・外旋位で緊張が増加し、
  骨頭の求心位を高めGHJの安定化に寄与 。

 ⑥外旋制動
 ・外転-外旋位での過度の外旋を防止し、AIGHLへ負担を軽減(Rodosky-1994)。

と長頭をまとめてみたが、最近は
短頭が肩甲骨アライメントに与える影響が意外と大きく、
その結果、長頭腱にストレスを与えるのではないかと、
短頭に着目中。
  


参考・引用

 

 

・肩関節・肩甲帯部疾患-病態・診断・治療の現状、別冊整形外科、2010.
・横山茂樹:肩関節周囲炎-腱板損傷の病期別理学療法ガイドライン理学療法19(1)2002.
・鈴木一秀:肩~上肢の機能解剖、臨床スポーツ医学18、2001.
・鈴木克憲:SLAP lesionの投球障害肩における位置づけ.整-災外41、1998.
・井樋栄二:肩の安定化機構、臨床スポーツ医学13(2)1996.