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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

月経周期と歩行立脚初期の膝関節動揺の関係

PI1-315「月経周期と歩行立脚初期の膝関節動揺の関係」櫻井 好美
第46回日本理学療法学術大会 2011年

・歩行計測は、健常青年 15 名(男性 5 名,女性 10 名.平均年齢 21.5 歳)に対して 7 日ごとに合計 12 回実施した。

基礎体温の記録から低温期と高温期を判別し 2 周期分を抽出。

・男性の立脚初期の変動係数は 、
 屈曲が1-3%、内-外反が3-6%、内-外旋が4-7%、前後移動量が2-4%で推移。

・女性は
低温期:屈曲1-3%、内-外反5-8%、内-外旋が5-7%、前後移動が3-6%。
高温期:屈曲1-3%、内-外反7-11%、内-外旋が5-11%、前後移動が3-8%
・内-外反と内-外旋でばらつきが大きくなる傾向がみられた。

・高温期である黄体期に大腿直筋と大腿二頭筋の筋硬度が有意に高くなるという報告がある。(岡崎ら、2008)


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ACL損傷でも月経周期との関係が取りざたされています。

ACL損傷患者(19歳以下、non-contact injury)の月経周期との関係。
・Ⅰ期(月経開始日~9日)は差がなく、
 Ⅱ期(月経開始10日~14日)で有意に高率、
 Ⅲ期(15日~月経開始日前日)で有意に低率であった。
・Ⅱ期は最も性ホルモンが分泌される時期で、ホルモン分泌による身体的変化が受傷に関与していることが推測(2006)。


排卵期(エストロゲン濃度高値)にACL損傷が多く、黄体期では少ない(2002-Wojtys)。
ACLの細胞にはエストロゲンなどのレセプターが存在(1996-Liu)しており、エストロゲン濃度の上昇は、コラーゲン合成と線維芽細胞の増殖を有意に抑制する(1979-Shikata)とされている。



まとめてみると。

卵胞期(5-14日) :低温期:ACL受傷が多い。ホルモン要因?。
排卵期(14日) :低温期:ACL受傷が多い。ホルモン要因?。
黄体期(15-28日):高温期:膝内外反、内外旋の動的不安定性↑。筋緊張要因?。

ややばらつきがありますが、
ACL損傷の予防に役立つかもしれないので、注目していきたいところです。