ACL損傷 女性
【ACL損傷 女性】
ACL損傷は、女性のほうが2~8倍高率に発生するとされています。
(1994-Lidenfeld、1995-Arendt、2000-Harmon、Huston、2001-Garrick)
その要因としては、
1)Q-angleが有意に女性が大きい(1989-Horton、1992-Woodland)。
・Q-angleが女性が大きいのは、相対的に広い骨盤幅と短い大腿骨長を持つため(2005-津田)。
・Q-angle増大により、ACL損傷の危険肢位である膝外反、下腿外旋を増大させる(1979-Powers)。
・一方で、ACL損傷患者-非損傷患者間でQ角に有意差は認められなかった(1998-Meister)という報告もある。
2)大腿骨顆間窩の形状、サイズ
・大腿骨顆間窩は、女性で有意に小さい(1993-Shelbourne、1999-Davis)。
・狭い顆間窩に通常径のACLが存在すればインピンジ、狭い顆間窩にみあった細いACLが存在すれば力学的強度が弱い可能性(2005-津田)。
<顆間窩サイズとACL損傷の関連あり>
・顆間窩幅の狭い群で、対側ACL損傷の発生率が有意に高かった(1998-Shelbourne)。
・ACL損傷と顆間窩の狭小との間に統計学的相関があった(1994-LaPrade)。
・CT像にてACL損傷患者に顆間窩の狭小がみられる(1987-Anderson)。
<顆間窩サイズとACL損傷の関連なし>
・損傷群と非損傷群では、顆間窩幅と顆間窩と顆部幅との比率(notch width index:NWI)で有意差なし(2005-Lombardo)。
・ACL損傷と顆間窩の関連を見出せなかった(1993-Schickendantz、1997-Teitz)。
・急性ACL損傷と健常群では有意差なし(1988-Souryal)。
3)筋力
・女性スポーツ選手は男性スポーツ選手に比べて、膝関節伸展位近くでの大腿四頭筋に対してハムストリングスの活動比率が低い(2005-Urabe)。
・女性では膝関節前方負荷に対して、大腿四頭筋がハムストリングスよりも優位に反応する(1996-Huston)。
※ACLにストレスを与える脛骨の前方引き出しを大腿四頭筋は助長し、ハムストリングスは制動する。
4) 動的下肢アライメント
・女性は男性と比較して、ジャンプの着地やカッティング動作を有意に浅い膝関節屈曲角度で行っている(2001-Malinzak、2004-Salci)。
・浅い膝屈曲角の動作では、膝関節に加わるエネルギーを筋で十分に吸収できず、骨や靱帯などの構成要素にかかる負担が増大する(2005-津田)。
5)ホルモン
参考・引用文献
津田英一:ACL損傷の予防―その指導―、臨床スポーツ医学22(3)、2005.
若年女性スポーツ選手のACLに月経周期が及ぼす影響、第17回日本臨床スポーツ医学会、2006.
浦邉幸夫:ACL損傷-発症・再発を防ぐトレーニング法、臨床スポーツ医学25(臨)、2008.
鈴川仁人:ACL損傷-解剖学・運動学・バイオメカニクス、CSPT、2009.