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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

第10回東京スポーツ整形外科研修会2)ACL損傷

1)ACL損傷は、PCL損傷に比べて手術をしないとスポーツ復帰率が悪い。
この要因として、ACL損傷では、

①自覚的な不安定感が強い
・脛骨の後傾角により、荷重時に脛骨の前方引き出し力が生じる。
・スポーツ動作で多い、膝軽度屈曲位での機能が損なわれる。
 →PCLは深い膝屈曲角で機能する。
・End pointがはっきりしない。
 →PCLは動きは大きなるが、End pointはしっかりしている。
②半月板損傷や軟骨損傷の合併症が生じ易い
③活動量が高く、スポーツレベルの高い人が多い
ACLではスポーツによる損傷に対して、PCLは交通事故が多い。

2)ACLの評価として、pivot shift testが有用である。
陽性では、屈曲30°付近で突然ガクッと脛骨の外旋後方滑りがおこる。
このメカニズムとしては、外反トルクをかけながら内旋-屈曲をしていった時に正常であれば、
ACLは屈曲10-40°付近の内旋を制動
②ITTは屈曲30°付近から内旋を制動
③MCLは外旋を制動
する。

test肢位では、MCLが軸となり内旋していくことになる。
ACLが正常であれば屈曲10°付近から、ACLの緊張により内旋が制限される。
ACLが損傷されていれば内旋が制限されず、屈曲30°付近でITTの緊張が入るためガクッと外旋後方滑りが生じる。

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model-based image-matching techniqueを用いた非接触ACLの受傷の分析では、接地後40ms前後で急激な外反と内旋で生じており、ここでACL損傷が生じていると考えられる。

受傷肢位として、外反-外旋(knee-in/toe-out)との報告もあるが、断裂後のその肢位になっていると考えられる。

膝外反により外側コンパートメントに圧迫力が生じ、
頸骨の後方傾斜角や外顆の形状により、
後方に移動することで前方引き出し力が生じACLが損傷する。

接地時に膝外反になる因子の一つとして、股関節屈曲によるエネルギー吸収がうまく行えていないことが考えられる。

接地時に股関節屈曲が不足する要因としては、
・大殿筋優位の筋活動(大腿四頭筋やハムストの機能低下)
・骨盤後傾位
・股関節内旋制限
があげられる。

受傷メカニズムとして、大腿四頭筋の牽引力による前方引き出しの影響は少ないと考えられる。


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ACL再建術後のアスレチックリハビリテーションとして、アジリティ能力の向上による回旋ストレスの回避が効果的かもしれない。

自転車による負荷試験では、
手術後、高負荷より低負荷での機能が低下している。

高負荷では、大殿筋や大腿四頭筋といった脚伸展力を有意に使い、これはジャンプ系の運動に関連する。

低負荷では、腸腰筋ハムストリングスなどの脚屈筋力を使い、これはアジリティ系の運動に関与している。

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受傷予防としては、やはり股関節屈曲の機能が重要になりそうです。

特に女性は、ジャンプの着地やスポーツ動作で股関節屈曲角度が少ないとの報告があります。

可動性ということではなく、床反力を吸収するショックアブソーバーとしての屈曲機能が必要になりそうです。