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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

.結帯動作の肩甲骨の動き

0438「肩関節伸展-内旋運動時における肩甲骨の運動解析」山﨑 敦: 第47回日本理学療法学術大会、理学療法学39(1)、2012

<対象>
・健常成人女性9名18肩(平均年齢:21.4±0.7歳)。

<運動課題>
・座位における肩関節伸展および内旋の複合運動(肩関節伸展-内旋運動)。
・開始肢位:足底が十分に接地した端座位。
・L4肢位:第3中手指節関節が第4腰椎棘突起に接する肢位。
・L1肢位:第3中手指節関節か第1腰椎棘突起に接する肢位。

<結果: 開始肢位/L4肢位/L1肢位>
1)上方回旋角(前額面上で肩峰からの垂線と肩峰と肩甲棘三角を結んだ線のなす角)
・88.6±5.3°/80.3±4.8°/78.2±5.1°:3群間で有意差あり (p < 0.001)。
・開始肢位に対してL4肢位、L1肢位はともに有意に低値(p < 0.001)。
・L4肢位、L1肢位間に有意差なし。
2)前傾角(矢状面上で肩甲棘三角からの垂線と肩甲棘三角と肩甲骨下角を結んだ線のなす角)
・8.7±3.0°/15.7±3.7°/18.2±3.5°:3群間に有意差あり(p < 0.001)。
・開始肢位に対してL4肢位、L1肢位はともに有意に高値(p < 0.001)。
・L4肢位、L1肢位間に有意差なし。

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・肩関節伸展-内旋運動(結帯動作)では、肩甲骨の下方回旋と前傾が生じる。

・L4肢位とL1肢位では、肩甲骨の上方回旋角や前傾角に有意差がみられないことから、 肩関節伸展-内旋運動(結帯動作)でより上方の脊柱を触るには、肩甲骨の下方回旋や前傾の可動性よりも、肩甲上腕関節の伸展、内旋、(外転)や肘屈曲、前腕回内の可動性の要因が大きいと考えられる。

・結帯動作に制限がある場合を考えた場合、
1)静的な肩甲骨アライメントが良好か?
 →上方回旋角が90°前後、前傾角が10°程度
2)動的な肩甲骨の可動性は正常範囲か?
 →結帯動作に対して肩甲骨の下方回旋、前傾が共に10°程度
・肩甲骨に異常がなければ、
3)肩甲上腕関節の可動性(内旋、伸展、外転)
 → 肩最大内旋位のため、内旋の影響が大きい。
4)肘屈曲の可動性(肩伸展位、前腕回内位)
という流れがいいのかもしれません。

肩甲骨のアライメントは比較的個人差が大きいので、左右差を確認することも大切になるでしょう。