.肩関節唇損傷:SLAP(Superior Labrum Anterior) Lesion
「<a href="http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130130-00000253-sph-base" target="_blank">佑、右肩手術も!関節唇損傷判明でブルペン入り白紙…日本ハム</a>」
【肩関節唇損傷:SLAP(Superior Labrum Anterior) Lesion】
・外傷性の上方関節唇損傷で、投球障害肩に診られるSLAP損傷はTYPE2(関節唇の一部のみが剥離した状態)が多くを占める。
・102例のType2の62%が後方病変、31%に腱板損傷(Morgan)。
・投球障害肩53例では、47%が後方損傷型、34%が複合型、前方損傷例は19%(Burkhart)。
※投球相の色々なphaseでも起きる可能性がある。
1)Cocking phase
・外転-外旋時に後方関節唇に上腕骨頭が衝突し、さらに剥離ストレスが起きる (Burkhart-2000) 。
2)Rate Cocking phase
・TypeIIはLate cocking phaseで生じやすい(Kuhn-2003) 。
・10体中9体でLate Cocking位置で上腕二頭筋長頭腱-関節唇複合体(BLC)損傷が発生 (2003-Kuhn) 。
・解剖学的に二頭筋腱が小結節周辺で巻きつき関節内では相当な張力を発生する可能性 (2003-Kuhn)。
・torsional force(ねじり力) が生じる。
3)Deceleration phase
・最も上腕二頭筋長頭の活動が高くなる時期で関節唇へのストレスも大きい (Yeh-2005)。
4)Follow-through phase
・減速期で肘が伸びきった時に、関節唇と二頭筋腱に牽引損傷ストレスが加わると仮定 (Andrews-1985)。
※発生要因
1)関節可動域の問題
①過剰な水平外転の反復(1995-Jobe、2010-Mihata)。
②肩甲上腕関節の過外旋(2003-Burkhart、2008-三幡)。
③2nd(90°外転位)の内旋制限(Burkhart-2000)
→原因として後方関節包の短縮。
④2nd回旋可動域
→2ndの回旋角度の合計か180°以下だと障害が起こり易い(Burkhart)。
2)肩後方関節包のtightness
・上腕骨の回旋中心が後上方に上がるため起こり易い(Burkhart-2000) 。
・肩後方tightnessによる上腕骨頭の後上方偏位(2003-Burkhart)
・上腕骨頭は外旋位で後下方に移動できず、後方上部に押し付けられることになる(Grossman-2005) 。
3)肩甲胸郭関節の機能異常(scapula dyskinesis)
・94%に肩甲骨の外転、前傾、下方回旋 (2003-Burkhart) 。
・要因は小胸筋のtightnessや僧帽筋下部線維のweakness(2002-Wilk、2003-Burkhart、2010-hrysomalis) 。
4)上腕二頭筋長頭の張力、牽引力
・外転外旋位(cocking phase)にすると上腕二頭筋はより垂直方向に角度を呈し張力が生じる:peel-back mechanism (1998-Burkhart、Morgan) 。
・rate cocking phaseに上腕二頭筋の根元に捻りが生じる。
・deceleration phaseで最も活動が高く、関節唇へのストレスが増加(Yeh-2005) 。
・follow-through phaseで上腕二頭筋長頭による牽引ストレスが生じる(Andrews-1985)。
5)軽徴な前方不安定性による上腕骨頭の前方偏位(1995-Jobe)。
※手術
・53例(44例が投手)のSLAP損傷患者全てが投球復帰し、87%は術前のレベルまて回復。
・しかし、腱板損傷を伴っていると、術前レベルまての回復はできなかった(Burkhart-2000)。
引用文献
・福吉正樹:投球障害のリハビリテーション、肩関節・肩甲帯部疾患―病態・診断・治療の現状 (別冊整形外科)、2010.
・杉本勝正:上腕二頭筋長頭・上腕三頭筋長頭の機能解剖と障害、Medical rehabilitation―Monthly book (No.73) 2006
・第2回SPTS:肩のリハビリテーションの科学的基礎、2006
・診断のための理学所見のとり方、関節外科9、2003.
・福島直:SLAP lesionの治療、整・災外41:859-868、1998.
・鈴木克憲:SLAP lesionの投球障害肩における位置づけ、整・災外41:869-873、1998.
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