痛みと情動の脳内機構とリハビリテーション5)
<痛みの情動-意欲的側面に関与する脳機能>
④前頭前野
情動:
・不快な情動体験による辺縁系の過活動は背外側前頭前野
(DLPFC)の機能を低下させる。
痛み:
・関節炎モデルラットでは、内側前頭前野の活動減少がみられ
た(Neugebauer-2010)。
・痛みを自分でコントロール出来るものと意味付けすることで
主観的な痛みは減少し、その際に前頭前野の活性化が認めら
れる(Wiech-2006)。
・慢性疼痛患者では前頭前野、前帯状回が萎縮
(Apkarian-2004)。
機能:
・負の情動を消去。
・報酬や罰を予測するといった内的な増強因子で反応が上が
る。
機能不全
・固執(こだわり:認知や思考の障害)の持続は、前頭前野の
機能不全を起こす原因となる。
疾患:
・慢性疼痛患者では萎縮し、意思決定能力、意欲の低下を引き
起こしている(Apkarian-2004)。
・慢性ストレスは前頭前野の機能を損ない、負の情動を消去す
る機能を失う。
ヒント:
・不快感の減少は、前頭前野を活性化(Maeoka-2011)。
・社会的報酬によって活性化が認められた(Izuma-2010)。
・前頭前野への経頭蓋直流電気刺激は主観的評価での不快感
を有意に減少(Boggio-2009)。
・ジョークは右側腹内側頭前野を活性化させる
(Goel-2007)。
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前頭前野は、他の動物に比べて人間では発達しており、 認知、人格、社会的行動などに関係している高次の脳領域である。
痛みを含む不快な情動体験は、辺縁系を介して前頭前野の機能を低下させ、さらに負の情動を強化する。
軽い運動、 社会的、対人的な刺激により活性化されるが、機能が落ちている場合にそこまで引っぱり上げること自体が難しいことも考えられる。
痛み→負の情動の高まり→脳機能不全→痛みの増悪、意欲低下、社会活動低下・・・
といった悪循環をどこで、どんな方法でほぐしていくか。
色々工夫して、出来る所から少しずつですね。