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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

腸脛靱帯炎

【腸脛靱帯炎】

腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の摩擦で生じる膝外側の疼痛で、主にランニング系のスポーツで生じる。

<解剖学的要因>
・膝屈曲30°付近で、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆との距離が狭小。
・膝屈曲30°以上で大腿骨外側上顆を前方、膝屈曲30°以下で大腿骨外側上顆を後方に移動。
→膝屈曲30°付近の屈伸は腸脛靭帯のストレス増大。

<ランニング動作>
・initial contactからtoe offでは、膝屈曲30°前後の屈伸を繰り返す(Novacheck-1998)。
・発症者では、股関節内転、膝関節内旋が有意に大きく、後足部の外反は小さい傾向(Noehren-2007)。

<アライメント>
・膝の内反-内旋位。
・後足部の外転(Messier-1995)。
体幹側屈。

<筋機能>
・大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋のtightnessおよび過剰収縮。
・股関節外転筋力低下(Noehren-2007)
・外側広筋の過剰収縮:腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の距離が狭小。
・下部体幹の安定性欠如。

<その他のリスクファクター>
・男性:女性の3-5倍(McNicol-1981、Messier-1995、Taunton-2002)。
・トレーニング量
・サーフェイス(Nobel-1980)
・シューズ(Nobel-1980、van der Worp-2012)

<治療>
1)注射
・酢酸メチルプレドニン注射群では、有意に症状改善(Gunter-2004)。
2)運動
・股関節外転運動、ストレッチ、骨盤下制運動(Frederison-2000)。
・骨盤の内方移動を促すために股関節内転筋のストレッチ。
・中殿筋、体幹安定化ex。
3)テーピング
・膝外反-外旋位。
・膝外旋。
4)足底板
・前足部で足圧中心が外側移動するもの。

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臨床的には、30-50歳代男性の大腿筋膜張筋-中殿筋のtightnessが強いランナーに多いように思われます。

参考・引用
Tom F.Novacheck:The biomechanics of running、Gait and Posture7、1998.
今屋健:膝スポーツ障害の理学療法(2);下肢関節疾患の理学療法、三輪書店、2001.
蒲田和芳:膝下腿外旋症候群、sportsmedicine32-35、2001.
福井勉:膝関節疾患の動作分析、理学療法学18(3)、2003.
佐藤祐輔:腸脛靭帯炎、第9回SPTS、2013.