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.仙結節靱帯3)

【仙結節靭帯:sacrotuberous ligament】

 仙結節靭帯の緊張が高くなる要因としては、仙結節靭帯に付着する大殿筋、大腿二頭筋長頭、多裂筋、脊柱起立筋、梨状筋の緊張により生じることが考えられる。

 殿部-下肢痛でみられる仙結節靭帯内側部に過緊張がある場合には、主に大殿筋下部線維、大腿二頭筋の緊張も高いことが多く、これらの筋の緊張が仙結節靭帯内側部の緊張を高めていることが考えられる。

①大殿筋下部線維
 付着面積、起始の共通点が多いことなどから、仙結節靭帯内側部の緊張を高める要因としては一番影響が大きいといえる。特に仙骨下部が同側に引かれている場合は大殿筋の影響が強いといえる。
 姿勢や動作などの影響で大殿筋下部線維がtightnessになっている場合は、おそらく立位で同側の股関節伸展-内転位をとっていたり、歩行時の股関節伸展域で内転位をとっていることが考えられる。

大腿二頭筋長頭
 殿部-下肢痛があり仙結節靭帯内側部に過緊張がある場合では、大腿二頭筋長頭の筋緊張も高い場合が多いが、付着や接続に関しては、
・明確な接続がある(2009-Thomas)
・線維を受け取っている場合もある(1989-Warwick&Williams)
・12例中6例で大腿二頭筋長頭の起始腱の一部が仙結節靭帯と癒合(1989-Vleeming)
とあまりはっきりしていない。したがって、大腿二頭筋長頭のtightnessが仙結節靭帯内側部の緊張に大きな影響を与えるかは疑問の残るところである。
 またこの場合の、大腿二頭筋長頭の筋緊張は、直接アプローチしても変化に乏しく、股関節外旋筋を緩めた方が緊張が落ちる場合が多い。しかも、筋緊張は動くとすぐ戻る印象があり、筋の実質的なtightnessというよりも他部位からの反射的な影響が強いのかもしれない。

 仙結節靭帯内側部の過緊張による殿部-下肢痛が生じる可能性があり、その要因としては大殿筋下部線維のtightnessの影響が大きいことが考えられる。この場合、大殿筋下部線維がtightnessになる要因をつぶしていく必要がある。股関節伸展域の外転作用が重要になるかもしれない。

参考・引用文献

 

 

 

・中宿伸哉:仙腸関節障害に対する解釈と運動療法、第33回メディリハ、2012.

・宇佐英幸:MRによる背臥位での一側および両側股関節屈曲運動の解析、理学療法学37(1)、2010.

・蒲田和芳:骨盤-胸郭リアライメント法、理療38(4)、2009.・平野幸伸:理学療法に必要な触診技術‐骨盤ランドマーク(2)、理学療法25(6)、2008.
・石井美和子:骨盤複合体の運動学、理学療法25(9)、2008.
・山内正雄:仙腸関節の病態運動学と理学療法理学療法25(11)、2008.

・Vleeming A:The function of the long dorsal sacroiliac ligament: its implication for understanding low back pain、Spine 21(5)、1996.
・Vleeming:The sacrotuberous ligament : a conceptual approach to its dynamic role in stabilizing to sacroiliac joint, Clinical Biomechanics4(4),1989.


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