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女子スポーツ選手における前十字靭帯損傷者の大腿骨顆間窩と前十字靭帯の体積について

【0032:女子スポーツ選手における前十字靭帯損傷者の大腿骨顆間窩と前十字靭帯の体積について:加藤 茂幸、第49回日本理学療法学術大会、2014】

【対象】
ACL損傷女性群:片側ACL再建女性11名の反対側健常膝関節11膝(平均年齢21.2歳)
・女性群:健常女性10名の右10膝(平均年齢20.2歳)

【結果】
1)大腿骨顆間窩の容積: ACL損傷女性群/ 女性群
・4804mm3/5680 mm3:有意差あり
2)ACL体積: ACL損傷女性群/ 女性群
・1182 mm3 /1372 mm3 :有意差なし
3)ACL 体積比率(大腿骨顆間窩容積に占める ACL体積の割合)
・有意差なし
4)大腿骨顆間窩の容積とACL体積
・相関あり。

【考察】
ACL損傷群と非損傷群のACL体積比率には差がなく、顆間窩容積とACL体積の相関は有意であった。
・したがって、顆間窩幅狭小の膝関節においてはACL自体も細いことが推察される。
・靱帯自体の体積が小さく細いことがノンコンタクト損傷のリスクになりえるのではないかと考えられた。

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ACL損傷のリスクファクターの一つとして、大腿骨顆間窩のサイズや形状があります。
・顆間窩幅が狭い群に有意に対側ACL損傷の発生率が高かった(1998-Shelbourne)。
ACL損傷と顆間窩の狭小との間に統計学的相関があった(1994-LaPrade)。
ACL損傷患者に顆間窩の狭小がみられる(1987-Anderson)。

また、大腿骨顆間窩のサイズや形状は、ACL損傷と関連なしとの報告もあります。
・損傷群と非損傷群では、顆間窩幅と顆間窩と顆部幅との比率(NWI)で有意差なし(2005-Lombardo)。
ACL損傷と顆間窩の関連を見出せなかった(1993-Schickendantz、1997-Teitz)。
・急性ACL損傷と健常群では有意差なし(1988-Souryal)。

顆間窩幅が狭いことで、2つのリスクが考えられます(2005-津田)。

1)大腿骨顆間窩が狭くて、通常径のACLの場合
・大腿骨外側顆間壁とのインピンジによってACLに過剰な張力が生じる。

2)大腿骨顆間窩が狭くて、それにみあった細いACLの場合
ACL自体の力学的強度の問題により損傷頻度が高くなることが考えられる(2005-津田)。

今回の報告では、ACLも細いことが示唆されています。
顆間窩幅やACL自体の強度による問題だと、予防ということはなかなか難しくなってきます。