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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

.拘縮(凍結)肩の責任病巣

【拘縮(凍結)肩の責任病巣】
 
<関節包>
・関節包の線維膜は、凍結肩の一次性変化の責任病巣とされる。
・拘縮肩の関節包には瘢痕化、線維化、短縮、癒着がある。
・凍結肩における挙上の主な制限因子は関節包下部。
・凍結肩の術中所見では、関節包の腋窩陥凹部には著しい短縮が起こっている。
・病理学的には交織性線維の形態変化による伸張性の欠如。
 
<腱板疎部>
・瘢痕化、線維化が著しく、強固な制限因子となる。
 →瘢痕は炎症の収束が遅延した結果。 
 
<腱板疎部、下関節上腕靱帯複合体(IGHLC)>
・腱板疎部の瘢痕化とIGHLCの肥厚が拘縮病変の原因。
 
<腱板疎部、烏口上腕靭帯(CHL)>
・凍結肩の術中所見では、腱板疎部、CHLには肥厚と瘢痕化が生じている。
・難治性拘縮肩では全例に腱板疎部、CHLの瘢痕化を著明に認めた。
 →これらの切離-摘出により三次元的に拘縮が消失。
 
<CHL>
・凍結肩では、厚く肥厚、瘢痕化し、柔軟性の乏しい状態となる。
 
<滑液包>
・凍結肩の術中所見では、肩峰下滑液包、三角筋下滑液包、烏口下滑液包には癒着が起こっている。
・ほとんどの拘縮肩の関節造影では、肩甲下滑液包が閉塞。
→関節内圧が上昇し痛みが生じる。
 
<滑膜>
・滑膜には血管の増生、浮腫性の変化がみられるが、炎症細胞の浸潤や一次性変化の徴候はみられず二次性変化であるとされる。
・肩関節の滑膜には軽度の浮腫や鬱血所見がみられるものの、凍結肩の病因は関節内には存在せず、関節外組織に原因がある。
 
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拘縮肩では、関節包-靭帯由来と滑液包由来やその混合がありそうで、滑膜はあまり問題になっていないようです。
 
関節包-靭帯由来では、なんらかの原因で炎症が起こり、その修復過程の中で瘢痕化、線維化が生じ伸張性を失っている状態といえる。
この場合可動域制限は、エンドフィールは明確で、関節包なら主に挙上、腱板疎部、下関節上腕靱帯複合体、烏口上腕靭帯なら外旋が制限されることが多くなる。
瘢痕組織のまま伸張性を回復するのではなく、リモデリングされて伸張性が回復すると考えられ、回復はある程度時間に依存することになる。 
 
滑液包由来でも、炎症が起因となっているが、制限の因子としては伸張性の低下ではなく、内圧の高まりによる痛みの影響が大きいと考えられる。
この場合、エンドフィールは不明瞭で、比較的低い可動域から痛みによる制限がみられる。

治療の効果としては、積極的治療を行うことで9割が約5~6ヶ月で改善や、治療の有無に関係なく2年ほどで回復し予後は良好との報告がある。
 
参考文献

・牛田享宏:肩(関節)の痛みの病態、肩関節傷害 診療の真髄 MB Med Reha157、2013.

・菅谷啓之:肩疾患の特殊性、理学療法学39(7)、2012
・立花孝:肩関節に対する理学療法の新展開、理学療法学39(8)、2012
・緑川孝二:中高年の肩の疼痛予防のための運動について、臨床スポーツ医学25(9)、2008.
・山口光國:肩関節機能の評価法と臨床推論の進め方、理学療法25(9)、2008.
・林典雄:関節拘縮の機能解剖学的特性、理学療法21(2)、2004.
高濱照:運動器の機能解剖、理学療法21(5)、2004.
・診断-治療に必要な機能解剖、関節外科9、2003.
・拘縮を主体とする障害に対する理学療法、Med Reha 17、2002.
・疼痛を主体とする障害に対する理学療法、Med Reha 17、2002. 
・衛藤正雄:キネシオロジー、Journal of clinical rehabilitation 4(1)、1995.