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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

変形性膝関節症患者における下肢機能や変形レベルと疼痛認識との関連性

【0722:変形性膝関節症患者における、下肢機能や変形レベルと疼痛認識との関連性:大原桃、第49回日本理学療法学術大会(横浜)、2014.】


<対象>

・変形性膝関節症の診断を受け、人工関節全置換術(TKA)手術を予定している患者105名114膝。

・男性14名、女性91名、平均年齢73.1歳。


<方法>

・術前に破局的思考評価として Pain Catastrophizing Scale(PCS)を記入。


<PCS>

・13項目52点満点で測定。

・「反すう」,「無力感」,「拡大視」の3つの下位尺度から構成。

・点数が高いものほど痛みをネガティブで過剰に捉える破局的思考が強いとされる。


<結果>

・PCS の total score、反すう、無力感、拡大視の全てにおいて、JOAスコア、FTA、OA stageと相関は認められなかった。

・PCS total:平均28.5(反すう:10.15、無力感:12.39、拡大視 :6.08)。

・JOA score:平均56.7点

FTA: 平均183.6°

・北大OA stage:平均3.97(III : 33名、IV:44名、V:37名)。


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変形性膝関節症では、痛みに対するネガティブな思考である破局的思考との関係は薄いようです。

これは、臨床的にも当てはまる印象があります。

変形性膝関節症では腰痛や頸部痛などに比べて、本人が訴える痛みの程度と他覚的に評価して推測した痛みの程度が乖離することは少なく、痛みの要因が比較的クリアになります。

腰痛や頸部痛などに比べて、不安、抑うつ、認知の歪み、ストレスなどが関与する社会的危険因子が関与する割合が少ないのかも知れません。

変形性膝関節症では、罹患者が比較的高齢で社会的なストレスなどが少ないことが考えられます。

しかし、腰痛などでは高齢の方でも社会的危険因子の関与が疑われる場合があり、膝という部位の特性(解剖学的、生理学的、認知的など)もあるのかも知れません。