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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

.理学療法学まとめ「乳がんに対する理学療法」術後問題点とその対応

池端桂子:乳がんに対する理学療法理学療法学41(6)、2014

 

<手術後の問題点>

 

1)漿液腫(seroma)

・症状

 :創傷治癒の遅延、易感染症、皮弁壊死、持続痛、回復の延長
  などが生じる。

・危険因子

 :45歳以上、高血圧、術後3日間で計500mlを超える排液量、
  術後8日以上のドレーン留置。

・対応

 :術後の漿液排液量の抑制が、seroma形成の軽減の可能性。

 

2)AWS;Axillary Web Syndrome(別名 cording)

・特徴

 :腋窩周辺のリンパ節郭清術後1週間以降、腋窩部、前腕部に
  索状物が突然出現。

・要因 

 :索状物はリンパ管、静脈の閉塞に起因すると推測。

・症状

 :疼痛、肩関節外転制限が生じる。

・発症率

 :センチネルリンパ節生検後20%
 :腋窩リンパ節郭清術後44-72%

・危険因子

 :年齢が若く痩せている症例に見られる傾向。

・対応

 :創周囲の過敏性の軽減、瘢痕モビリゼーション、
  持続的伸張。

 

3)乳房切除後疼痛症候群(PMPS)

・症状

 :術後3ヶ月以上続く前胸壁、腋窩、上腕内側の慢性疼痛。

・要因

 :肋間上腕神経の損傷と考えられる。

・危険因子

 :若年層で多い。

・対応:

 :腋窩にクッションを挿入すると症状の緩和がみられる。

 

4)翼状肩甲

・要因

 :長胸神経の損傷。

・症状

 :肩関節屈曲、外転の制限。

・発症率

 :腋窩リンパ節郭清術後10-30%。

・対応

 :肩甲骨周囲の安定性の維持。

 

5)リンパ浮腫

・特徴

 :リンパ流のうっ滞、リンパ流機能不全が生じ手術側の上肢に
  浮腫が生じる。

 :一般的に術後12-14ヶ月後に発症する。

 :初期には可逆性だが、進行すると不可逆性になる。

・危険因子

 :皮膚穿刺、乳房切除、BMI26以上。

・対応

 :複合的治療セラピストによる
  「スキンケア」、「医療徒手リンパドレナージ」、
  「圧迫療法」、「排液効果を高める運動療法」、
  「生活指導」などの実施。

・退院後リンパ浮腫の予防

 :術側上肢の長時間の下垂を避ける。

 :背臥位では、肘伸展位の軽度挙上位。

 :術側上の側臥位では、上肢挙上位。

 :筋力トレーニングは術後4-6週目より推奨。
 

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整形外科のクリニックでは、乳がん手術直後を診ることはありませんが、整形疾患で受診している方の中では、乳がんの既往や治療中の方が思っているより多い印象があります。

リンパ浮腫は不可逆性ということなので、早期の対応が重要です。

また、乳がんの発症率に関してもそうですが、色々な面において高BMIというのは良くないようです。