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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

投球障害肩2)

【投球障害肩2)】


投球相の問題点


1)wind up phase

・骨盤後傾や胸椎円背→肘下がりや突き出しの要因となる。

・十分な両側の股内旋-内転、非軸足の振り上げによる上体の反投球方向の回旋が必要。


2)cocking phase

・棘上筋よりも他の腱板筋のほうが肩関節前方安定性への貢献が大きい。

上腕二頭筋長頭の肩関節前方安定性への貢献を示唆。

・棘下筋、小円筋、肩甲下筋などの活動が増加。

①early cocking phase

・ステップ時の投球反対側の十分な股外旋が必要。

・股関節の外転-外旋の不足→早期より投球方向へ体幹が正対し体が開く。

②late cooking(最大肩外旋)

・前鋸筋下部線維の機能不全→Late cookingで肩甲骨後傾運動が制限される。

・肩最大外旋が144°必要→肩甲骨後傾や胸椎伸展の可動性が重要。

上腕二頭筋腱が小結節周辺で巻きつき関節内では相当な張力を発生する可能性。

・前鋸筋、僧帽筋中部-下部線維が肩甲骨の安定化はかることが重要。


3)acceleration phase

・プロ投手では、腰部の安定、軸足の蹴り、非軸足完全に体重が乗った状態。

・高校生では、重心が低く軸足の蹴りが起らず、上肢の振りのみにたよる。

・肩甲下筋の活動が増加。

・プロ投手はアマチュア投手より肩甲下筋、広背筋の筋活動が高く、 棘上筋、棘下筋、小円筋、上腕二頭筋の少ない力で投球することができる。


<deceleration phase>

上腕二頭筋長頭の活動が高く、関節唇へのストレスも大きい→Type II SLAP Lesionの発生に関与。

・小円筋、上腕二頭筋長頭などの活動増加がみられる


<follow-through phase>

上腕二頭筋長頭の牽引ストレス→SLAP lesion


参考文献

金谷整亮:投球障害肩への運動学的アプローチ、臨床スポーツ医学13(2)1996.

第2回SPTS:肩のリハビリテーションの科学的基礎、2006.

鮫島康仁:成長期上肢スポーツ障害に対するリハビリテーション、MB Med Reha96、2008.

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島弘三:野球による肘内側側副靭帯損傷の診断と治療、関節外科27(8)、2008.

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宮下浩二:病態からみた機能訓練と投球動作指導、MB Med Reha157、2013.

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