.腰椎椎間板ヘルニア(L4/5外側ヘルニア)②
【L4/5外側ヘルニア②】
腰椎椎間板ヘルニアの下肢痛は、神経根の物理的圧迫、炎症による化学的影響によるものということです。
「物理的に圧迫された神経根には炎症性サイトカイン(TNF、インターロイキンなど)による神経根炎が惹起され下肢痛が生じる(Olmarker-1993)」
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物理的圧迫の原因となっている神経根に接触しているヘルニア(髄核、線維輪、軟骨終板、椎体辺縁の一部)がなんとかならないといけません。
物理的圧迫に対しては、
1)肢位による除圧
2)椎間孔を開大するような手技
3)ヘルニアの自然消失
4)手術による除去
などが考えられます。
1)肢位による除圧
・楽な姿勢をとるということになりますが、正常のアライメントから逸脱しすぎると筋性の痛みが生じる。
・動作時のコントロールは困難。
・それほど効果的ではない。
2)椎間孔を開大するような手技
・腰椎を屈曲-回旋、下肢牽引などがあるが、戻せば戻る。
3)ヘルニアの自然消失
「2-3ヶ月で自然消失するヘルニアも少なくない(Komori-1996)」
「サイズが大きいもの、遊離脱出したもの、MRIでリング状に造影されているものに自然消失が多い(Jensen-1994、Komori-1998)」
「サイトカインの作用で様々な酵素が誘導されてヘルニアを分解(Haro-2000)」
4)手術
「急性の下肢痛では、手術療法の方が早期に除痛が得られる(Gibson-2007)」
「疼痛持続のため10-30%は手術療法を選択せざるを得なかった(Saal-1989)」
・長期成績の比較では、臨床症状は手術療法の方が良好(Weber-1983)」
<手術適応>
①膀胱直腸障害
「大部分が脱出ヘルニアで緊急手術必要(本田-2006)」
「発症後48時間以後の手術では予後不良(Ahn-2000)」
②保存療法に抵抗
「6週間以上3ヶ月未満の保存療法で軽快しない(本田-2006)」
「2-3ヶ月の保存療法無効例→3ヶ月以上経過後の手術成績は不良例が多い(小森-2006)」
③進行する筋力低下
④脊柱管自体が狭窄
⑤著名なSLR制限を伴った神経脱落症状
<術後経過>
「10年間の長期結果:平均回復率が73%、背部痛残存74%、重度の疼痛が12%(Yorimitsu-2001)」
「手術後の不良例の一つの要因として、神経根の癒着(Fahrni-1966)」
→神経免疫学的、神経化学的変化により脊髄の感受性、疼痛閾値の低下が生じる。
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保存療法では、発症より3ヶ月くらいの間に、ヘルニアの自然消失を促していくというのがポイントになるかもしれません。