popliteus mのブログ

整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

.腰椎椎間板ヘルニア(L4/5外側ヘルニア)④

【L4/5外側ヘルニア④】

 

おさらい。

腰椎椎間板外側ヘルニアでは主に下肢痛が生じる。

下肢痛の要因は、神経根への物理的圧迫とそれによる炎症。

ヘルニアによる物理的圧迫による症状は、手術的な除去、自然消失などにより改善が期待できる。

自然消失に対しては、サイトカインが関与しており軽い運動が良さそうだが、目覚ましい効果は期待できない。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

次に、神経根の炎症に対しては、硬膜外副腎皮質ステロイド薬(ブロック)やNSAIDs(薬)が場合によっては有効のようです。

 

<硬膜外副腎皮質ステロイド薬>

・高いエビデンスは、腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛に対する治療開始後早期での硬膜外副腎皮質ステロイド薬の注入のみ(Buchner-2000)。

→治療開始後早期で疼痛軽減に効果があるが、中長期的な効果は意見が分かれている。

 

<NSAIDs>

・神経根性疼痛では、プラセボに比べ有意に疼痛が改善:RCT(Dreiser-2001)。

・1-2週間の投与により腰痛、下肢痛、SLRが改善(Hatori-1999)。

・腰椎椎間板ヘルニアを含む急性の座骨神経痛の軽減にプラセボ間に差がない:RCT(Koes-1997)。

 

そもそも、主病態がヘルニアが神経根を圧迫しているということなので、それによって生じている炎症にアプローチしても限界があるのは仕方がないことです。

 

また、硬膜外副腎皮質ステロイド薬やNSAIDsであまり効果がない場合は、炎症要因は治まっており物理的な影響がメインなのかもしれません。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

今回の症例(私ですが)に関しては、痛みもそこそこ我慢できる程度でしたので、特に薬物療法は行わず、日常生活レベルの維持や姿勢を少し気をつけました(ほとんど何もしていないのと同じですが)。

 

約3ヶ月後の現在では、安静時でも下腿前面から内側にかけてモヤモヤ感はあるが、階段や歩行時痛はほぼ(-)、股関節や腰部の急激な動きでは大腿神経領域にシャープな痛み、座位(特に低い座位)では下腿前面から内側にかけて痛しびれと改善傾向にあります。

 

何もしていないなら外側ヘルニアの下肢症状には理学療法は必要ないかというと、あながちそうとも言い切れないところもあります。


理学療法では少なくとも20分の時間は取れるので、病態や経過をしっかりと説明して理解してもらうことができます。


どうして腰が悪くて足が痛いのか?どうやったらよくなるのか?など、痛みのメカニズムがある程度わかっておけば、同じ痛みでもある程度自分でコントロールすることができます。


一度に理解することは難しいですし、痛みがあまり変化しなければ途中で不安になることもあります。


ですので、定期的に評価し現在の状態や今後の見通しを伝えるだけでも、理学療法として十分な役割があると考えます。


そんなもんかよと言われてしまいそうですが、身体の奥深くのおできや傷、外から動かしたり触ったりしても、変わるとは思えません。


通常の治癒過程に乗っけることが重要で、こじらせてしまう種々の因子(身体的、機能的、生活的、社会的、心理的など)をいかに排除していくかが大切かもしれません。

 

参考文献

・田口聖:走運動は損傷坐骨神経におけるマクロファージの極性を変化させ神経障害性疼痛の緩和を誘導する、第49回日本理学療法学術大会(横浜)、2014.

青木保親:discogenic pain(椎間板性腰痛)およびModic changeの基礎、臨床スポーツ医学 2013年 08月号 [雑誌]

・中前稔生:アスリートにおける腰椎椎間板ヘルニアの保存療法、臨床スポーツ医学 2013年 08月号 [雑誌]

・金岡恒治:discogenic painの保存療法、臨床スポーツ医学 2013年 08月号 [雑誌]

標準整形外科学 (STANDARD TEXTBOOK)

50歳を超えても30代に見える生き方 「人生100年計画」の行程表 (講談社+α新書)

・平木幸治:糖尿病を合併した急性心筋梗塞患者の運動耐容能低下の関連因子、理学療法学38(5)、2011.

・渡辺圭一:運動の筋肉由来内分泌因子分泌に対する影響、運動・物理療法21(3)、2010

・黒木裕士:関節軟骨の基礎研究からみた変形性膝関節症の理学療法理学療法学37(8)、2010.

・百町貴彦:腰椎椎間板ヘルニアの病態と整形外科的治療、理学療法25(1)、2008

・隈元庸夫:腰痛症患者に対するEBPT実践への取り組み、理学療法25(3)、2008.

・鈴木貞興:脊柱の病態運動学と理学療法Ⅱ、理学療法25(5)、2008. 

・佐藤徳太郎:メタボリックシンドロームの基礎知識、理学療法25(10)、2008.

田中雅人:疾患とその治療:腰椎椎間板ヘルニアMEDICAL REHABILITATION(98) Monthly Book 腰痛のリハビリテーション

・河村顕治:腰痛のバオメカニクスMEDICAL REHABILITATION(98) Monthly Book 腰痛のリハビリテーション

・本田淳:腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症の主な手術と術後のリハビリテーションの留意点、MEDICAL REHABILITATION(no.64) Monthly book 実践腰痛リハビリテーション [ 冬木寛義 ]

・石田和宏:腰椎椎間板ヘルニア理学療法23(1)、2006

・川上俊文:急性腰痛の自己管理と予防、MB Orthp18(2)、2005.

・荒木秀明:腰椎椎間板ヘルニアに対する手術療法前後の理学療法理学療法19(6)、2002.