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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

.中殿筋線維束の肉眼解剖

【1415: 中殿筋線維束の肉眼解剖、土田将之、第49回日本理学療法学術大会(横浜)、2014.】

 

<方法>

1)7体13肢(男3、女4)の中殿筋を剖出し、肉眼にて線維走行の異なる箇所(境界)の有無を観察し、境界に沿って中殿筋を分け、内部構造を観察。

2)27体14肢(男4、女3)の中殿筋を取り出し、前部線維と後部線維に分割し、その湿重量を測定し、前後の重量比を算出。

3)37体13肢の右下肢の腸脛靭帯と中殿筋、中殿筋と大殿筋の境界位置を腸骨稜上で計測し、腸骨稜長(ASIS-腸骨稜-PSIS)の何%の位置にあるかを記録。

 

<結果>
・中殿筋は、腸骨稜長の約60%の位置と大転子を結んだ線を境にして、前部線維と後部線維に分かれる。

・後部線維の停止部は、腱組織に移行しており、この内部腱を境界として構造的に前部線維と後部線維に分かれる。

・平均重量は、前部線維130.1±25.9g、後部線維は100.8±22.0g、重量比は約10 : 8。

 

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<中殿筋>

中殿筋

前部線維

後部線維

筋腹

125g(大きい)

38g(小さい)

走行

前頭方から後尾方

内側頭方から外側尾方

停止

大転子の前縁、上縁

大転子の上縁の後端

解剖

大腿筋膜張筋の深層、ASISの内方に位置

一部は大殿筋に覆われる

作用

 

 股関節外転

(+)外転筋力の60%

 股関節内旋

(+)

(+)屈曲90°位

 股関節外旋

(ー)

(+)

 股関節屈曲

(+)

(ー)

 股関節伸展

(ー)

(+)

機能(歩行)

立脚期の骨盤回旋

股関節の安定性


成書と比較すると、前部線維は125g:130gとほぼ同じですが、後部線維が38g:101gと約2.7倍近くの差があります。

 

参考文献

1)FRANK GOTTSCHALK et all:The functional anatomy of tensor fasciae latae and gluteus medius and minimus J. Anat. 1989

2)

3)

4)Martin Beck:The anatomy and function of the gluteus minimus muscle、The Journal of Bone and Joint Surgery、82-B(3)、2000.

5)解剖学、2001.

6)

7)

8)平野幸伸:理学療法に必要な触診技術、理学療法25(6)、2008.

9)河上敬介:中殿筋と小殿筋の位置、理学療法23(8)、2006.

10)

11)市橋則明:股関節の動きを運動学視点から考える、理学療法学38(8)、2011. 

12)河上敬介:股関節の動きを肉眼解剖的視点から考える、理学療法学38(8)、2011. 

13)小玉裕治:股関節屈曲-伸展角度の違いによる股関節回旋筋力の変化、理学療法学41(2)、2014.