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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

大内転筋は大腿内側四頭筋か?

【1582:大内転筋は大腿内側四頭筋か?、滝澤恵美、第49回日本理学療法学術大会(横浜)、2014.】


<方法>
・大内転筋を大腿深動脈の貫通動脈、内転筋裂孔を基準に4つの筋束(AM1-AM4)に分けて分析。

 1)生理的断面積と筋線維長の計測

・男性のホルマリン固定遺体10体(左7肢、右3肢)。

・死亡時の平均年齢79歳(75-91歳)。

・神経筋疾患を有した遺体、関節拘縮、著明な筋萎縮および過剰筋が見られる下肢は除外。

2)神経支配の調査

・ホルマリン固定遺体21肢(男性18肢、女性3肢)。

・著明な筋萎縮および過剰筋が見られる下肢は除外。

3)モーメントアームの計測

・未固定凍結遺体5体。


<結果:AM1/AM2/AM3/AM4>

1)解剖学的肢位における大内転筋各部位のモーメントアーム(cm)

・8.4/11.2/14.6/16.6

2)筋線維長/モーメントアーム比

・1.4/1.4/1.9/2.6

※モーメントアームを考慮しても、AM4の筋線維長が長い。

3)関節トルク(kgm)

・1.1/2.3/2.3/1.8

※AM1が他の筋束に比べ小さな値。

4)神経支配

・AM1とAM2が主に閉鎖神経後枝

・AM3は閉鎖神経と脛骨神経の二重神経支配

・AM4は脛骨神経

 

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大内転筋は、4頭で神経支配や解剖学的な特徴が異なっているということで、筋のイメージが少し変わってくるし、アプローチの仕方も広がっていきます。


大内転筋は内転筋裂孔で、内転部と膝腱部に分類することもあります。

・内転部(上部、前部):恥骨下肢と坐骨結節より起こる筋束。

・膝腱部(下部、後部、ハムストリングス部):坐骨結節より起こる筋束で内転筋結節に着く。


内転部は股関節の内転、屈曲、回旋、膝腱部は股関節の伸展に作用するようです。


参考文献

・河上敬介:骨格筋の形と触察法/大峰閣、1999.

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・Sahrmann:運動機能障害症候群のマネジメント―理学療法評価・MSBアプローチ・ADL指導/医歯薬出版、2005.

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・ケンダル:筋:機能とテスト―姿勢と痛み/西村書店、2006.

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・解剖学、2001.
・平野幸伸:理学療法に必要な触診技術-骨盤-大腿筋(3)、理学療法25(9)、2008.