.腰椎椎間板ヘルニア:治療
【腰椎椎間板ヘルニア:治療】
<保存療法と手術療法>
保=手:長期的予後における下肢痛の遺残や復職率では差がない:グレードB (Weber-1983、Nykvist-1995、Atlas-2001)。
保<手:急性の下肢痛では、手術療法の方が早期に除痛が得られる(Gibson-2007)。
保<手:長期成績の比較では、臨床症状は手術療法の方が良好(Weber-1983)。
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※手術療法※
<手術適応>
1)膀胱直腸障害
・緊急手術必要(本田-2006)。
・膀胱直腸障害の出現では、発症後48時間以後の手術では予後不良(Ahn-2000)。
2)保存療法に抵抗
・6週間以上3ヶ月未満の保存療法で軽快しない(本田-2006)。
・2-3ヶ月の保存療法無効例(小森-2006)。
3)進行する筋力低下
4)脊柱管自体が狭窄
5)著名なSLR制限を伴った神経脱落症状
<術後の後療法>
○:セルフエクササイズ群に比べて伸展エクササイズ群では、背筋力、疼痛、QOL、職場復帰率が有意に改善:グレードB (Ostelo-2008)。
△:各種エクササイズの単独の効果やどの時期に、どの順番で、どの程度の強度で施行するかなどは不明:グレードC (Hakkinen-2005)。
△:術後早期の運動の良好な結果は49~90%と一定していない(Lewis-1987、Manniche-1993、Junge-1996)。
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※保存療法※
<硬膜外副腎皮質ステロイド薬>
○:高いエビデンスは、腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛に対する治療開始後早期での硬膜外副腎皮質ステロイド薬の注入のみ(Buchner-2000)。
△:治療開始後早期で疼痛軽減に効果があるが、中長期的な効果は意見が分かれている。
<NSAIDs>
○:神経根性疼痛では、プラセボに比べ有意に疼痛が改善:RCT (Dreiser-2001)。
○:1-2週間の投与により腰痛、下肢痛、SLRが改善(Hatori-1999)。
×:腰椎椎間板ヘルニアを含む急性の座骨神経痛の軽減にプラセボ間に差がない:RCT (Koes-1997)。
<運動療法>
①急性期
×:腰痛の軽減や機能障害の改善の効果の報告や具体的な介入法に関するエビデンスはない(Hayden-2005、Tulder-2006、Chou-2007)。
②亜急性期
○:通常の保存療法に比べて、段階的に活動量を増やす運動療法は、欠勤日数を減少:グレードB (Staal-2004、Hlobil-2005)。
×:プラセボ治療、一般的な保存療法と比較し、痛みの軽減、機能改善に差はない(Hayden-2005、Chou-2007)。
③慢性期
◎:強く推奨:グレードA (Airaksinen-2006、Chou-2007)。
○:セルフエクササイズに比べ理学療法士管理下の方がコンプライアンスがよく、長期成績も良好:グレードB (Myer-2007)。
○:他の保存療法に比べて痛みや機能の改善、欠勤日数の減少、職場復帰率への効果あり(Staal-2004)。
?:痛みの状況に応じた具体的な介入方法や長期的な効果に関しては現時点では不明(kool-2004)。
<McKenzieエクササイズ>
○:急性期に対する若干の効果が認められる(Machado-2006)。
?:慢性期に対する効果は明確でない(Machado-2006)
<集中的集学的リハビリテーション>
○:痛みの軽減や機能障害の改善に効果(Karjalainen-2003)。
<脊柱マニュピレーション>
○:急性期に推奨:グレードB (Tulder、Santilli-2006、Chou-2007)。
<牽引療法>
×:腰椎椎間板ヘルニアに限ると有効とはいえない(Heijden-1995)。
参考文献
伊藤俊一:腰椎椎間板ヘルニア 理学療法診療ガイドライン、理学療法学42(6)、2015
中前稔生:アスリートにおける腰椎椎間板ヘルニアの保存療法、臨床スポーツ医学 2013年 08月号 [雑誌]、2013.
田中雅人:腰痛を呈する疾患とその治療:腰椎椎間板ヘルニア、MEDICAL REHABILITATION(98) Monthly Book 腰痛のリハビリテーション、2008.
百町貴彦:腰椎椎間板ヘルニアの病態と整形外科的治療、理学療法25(1)、2008
本田淳:腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症の主な手術と術後のリハビリテーションの留意点、MB Med Reha64、2006
荒木秀明:腰椎椎間板ヘルニアに対する手術療法前後の理学療法、理学療法19(6)、2002.