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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

ペインマネジメントプログラム参加者における痛みの主観的改善度に影響を及ぼす因子の検討

【O-0375:学際的アプローチによるペインマネジメントプログラム参加者における痛みの主観的改善度に影響を及ぼす因子の検討、井上雅之、第50回日本理学療法学術大会、2015】


<対象>

・「慢性痛教室」参加者48名(男性17名、女性31名)、平均年齢64.8歳(27~81歳)、平均罹患期間 8.3年(1-50年)。


<方法>

・1グループの定員を5-7名とし、痛みに関する講義とエクササイズを組み合わせ、週1回、全9回実施。

・講義内容:痛みのメカニズム、コーピング、ペーシング、睡眠、栄養など(医師、理学療法士、管理栄養士)。

・エクササイズ:リラクセーション、ストレッチング、筋力強化、エルゴメーター、水中ウォーキングなど(医師、理学療法士、トレーナー)。


<評価>

1)痛み

・VAS(痛みの強さ)、PDAS(生活障害度)、HAD不安、HAD抑うつ(不安-抑うつ)、PCS(破局的思考)、PSEQ(自己効力感)。

2)身体機能評価

・体重、長座体前屈、開眼片脚立位保持時間、10mジグザグ歩行、 起居動作テスト、身辺作業能力テスト、6分間歩行距離など。

3)終了時

・痛みの主観的改善度:1非常に悪化、2やや悪化、3わずかに悪化、4変わらない、5わずかに改善、6やや改善、7非常に改善の評価を実施。

・1-3を悪化群、4不変群、5-7を改善群に分類。


<結果>

・悪化群9名、不変群13名、改善群26名:年齢、罹患期間などに有意差なし。

1)開始時の群間比較:改善群が悪化群に比べて有意に良好な値。

・VAS、PDAS、HAD 不安、HAD 抑うつ、PCS、起居動作

2)開始時と終了時の群内比較:全ての群で有意に改善

・VAS、PDAS、HAD 不安、HAD 抑うつ、前屈、片脚立位、ジグザグ歩行、起居動作、身辺作業、6MD。

3)開始時と終了時の群内比較:改善群、不変群で有意に改善

・PCS、PSEQ


※悪化群

・開始時の痛み、生活障害度、不安、抑うつ破局的思考が強く、日常生活動作が不良である傾向。

破局的思考、自己効力感が痛みの主観的改善度に影響を及ぼす因子である可能性が推察。


破局的思考

・現在や将来の痛みに起因する障害を過大に見積り、そのような考えに囚われてしまう痛み認知の歪み。


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慢性疼痛では、疾患的因子、解剖学的因子、機能的因子、心理的因子、社会的因子などが複雑に絡みあっています。

痛さの程度、部位などが不明瞭であったり、よくよく聞くと痛いのではなく怖いということもあり、本当の痛さがわかりにくいこともあります。

慢性疼痛に限りませんが、年齢、性別、職業、家族構成、受傷機転、罹患期間、他の疾患、既往歴などなどを考慮に入れて、ある程度その人に成り代わって、かつ客観的に受け止めること治療方針を立てることが必要になります。

しかし、それはなかなか大変な作業です。

こちら側の器が大きくないとできません。

色々な種類の本を読むことや、日々の臨床経験が少しずつ器を大きくしてくれます。

セラピスト側は、クライアントに与えていることより、クライアント側から与えられていることが多いということを自覚することも大切です。

お猪口くらいだったのが、子供の茶碗くらいになってきたかな・・・