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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

慢性疼痛

【慢性疼痛】


<慢性疼痛とは>

・器質的疾患や外傷が原因となり、その原疾患が治癒した後も持続する痛み。

・神経の可塑的変化など生物学的要因により発生。

・持続する痛みによる身体機能低下、心理的、社会的要因が影響し、それぞれの要因が複雑に関連した痛みと考えられる。


<脳機能>

辺縁系(情動系)領域の過活動(Apkarian-2011)

視床や島(感覚系)の働きは減少(Apkarian-2011)

前頭前野各部位の血流低下(Honda-2007)。

前頭前野、前帯状回が萎縮→意思決定能力、意欲の低下(Apkarian-2004)。

後頭葉の機能不全(身体イメージ)、触覚機能障害(Moseley-2008)


<機序>

・痛み→運動の抑制→疼痛回避行動→学習性の不使用→患部の体部位再現が狭小化→さらなる痛み→


<悪循環の解消のための戦略>

・ニューロフィードバック、共感、運動イメージプログラム、錯覚、感覚弁別課題、ミラーセラピー、プリズムアダプテーション、視覚入力変調(McCabe-2005) 。 


<運動>

・痛みのある部位の隣接部位の運動に効果(Jo-2012)

・運動により健常者では放出される内因性オピオイドが、慢性疼痛患者では放出されずに鎮痛効果がないこともある(Jo-2012)


<瞑想、マインドフルネス>

うつ病や慢性疼痛の治療、全体的な安寧感を涵養する効果がある。

・痛みを伴う感覚を解釈、変更、拒絶あるいは無視せず、その体験をありのままに観察して率直に受け止める→痛みが弱まるわけではないが、痛みに悩む度合いが減少。


引用文献
・本田哲三:慢性腰痛への認知行動療法、MB Med Reha 98、2008.

森岡周:痛みと情動の脳内機構とリハビリテーション、TAP講習会、2013

・Matthieu Ricard:瞑想の脳科学日経サイエンス(1)、2015


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慢性痛における認知の歪みは、その背景として疼痛により生じた脳機能の不全も考えられます。


しかし、そもそも多少認知の歪みがあり疼痛に対して過剰に反応してしまった可能性もあります。


前者では疼痛に対するアプローチ、後者では認知に対するアプローチが重要になるかもしれません。


一番大切なのは慢性痛に移行させないことで、疼痛が生じた初期に適切な対応ができるかが重要になると思われます。

いかにこじらせないで通常の治癒過程に乗っけることができるか。


そのためには、クライアントに合わせた個別的な対応が必要で、病態や経過の理解を深めることが必要な場合や、あまり患部を意識させないようにしたほうがいい場合など様々で、このあたりのさじ加減がセラピストとして重要になると考えられます。