.ACL損傷理学療法診断ガイドライン
長妻香織:ACL損傷理学療法診断ガイドライン、理学療法学42(7)、2015
<受傷肢位>
・カッティング、急激なストップ、ジャンプ着地(グレードA)。
・膝関節軽度屈曲位、外反位が多く、下腿回旋は一定の見解は得られていない(グレードA)。
・女性では非接触型が多い(グレードB)。
<競技レベル>
・サッカー、バスケットボールでは、競技レベルにより発生頻度は変わらない(グレードC)
・アルペンスキーでは、競技選手よりレクリエーションレベルでの発生頻度が高い(グレードC)
<評価>
・Lachman test(グレードB)
・one leg hop test(グレードC)
<二次的損傷>
・ACL損傷後、経年的に内側半月板損傷、軟骨損傷が認められることがある(グレードA)。
<保存療法>
・多くの場合、支障なく日常生活を送れるようになるが、giving way、疼痛が残存する場合もあり一定の見解は得られていない(グレードC)
・レクリエーションレベルであれば、復帰可能な場合もある(グレードC)。
<手術療法>
・膝屈筋腱による再建術では、1重束再建術に比べ解剖学的2重束再建の方が成績良好(グレードB)。
・膝屈筋腱による再建術後、膝蓋大腿関節の変形は4-5%で認められ、膝蓋大腿関節由来の疼痛も出現する可能性はある(グレードB)。
・BTBでは大腿四頭筋、半腱様筋を用いた場合はハムストリングスの筋力低下がみられることが多い(グレードB-C)。
<術後の装具装着>
・装具装着の有無により臨床成績に影響はないと考えられる(グレードC)。
・quadの収縮は、ACLの張力を膝関節屈曲0-45°では増加、60°以上では変化しない(グレードA)。
・hamの収縮は、ACLの張力を減少(グレードA)。
・quad、hamの同時収縮では、完全伸展から屈曲30°では他動時の張力より有意に高い(グレードA)。
<CKCとOKC>
・CKCでの脛骨前方移動量は、OKCに比べて少ないが認められる(グレードA)。
・CKCでは、膝屈曲位から伸展する際に張力が増加(グレードA)。
・再建術後の筋力強化では、OKC、CKCどちらでも機能的には有意差はない(グレードC)
<エクササイズ>
・ヒールレイズ、片脚スクワット、チェアースクワットはACLに同等の張力を与える(グレードA)。
・サイクリングは、他の運動に比べて比較的ACLの張力が少ない(グレードA)。
<ACL再建術後のスポーツ復帰>
・元のレベルへの復帰は50-60%で、術前のスポーツレベルが高いほどその割合は高い(グレードB-C)。
・12か月後で50-60%が復帰し、競技レベルが高いほど割合は高い(グレードC)
<予防>
・ある程度予防可能と考えられ、ジャンプ、バランス、筋力、アジリティ、動作指導など複数の要素を組み合わせたプログラムが発生率を減少(グレードB)
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ACL損傷に対してガイドラインだけで完結にまとめると(乱暴ですが)。
基本的には手術療法がよさそう。
競技レベルの選手では、レベルが高い選手ほど、復帰率、復帰レベルも高い。
術後の装具装着はあまり意味がなさそう。
膝屈曲0-45°での大腿四頭筋の収縮やCKCでの屈曲位から伸展する運動ではACLの張力が高くなるので、保存療法、術後のリハで注意が必要。
予防はある程度可能。
受傷すると1年近く棒に振るし、レベルも低下することは否めないので、普段のトレーニングで取り入れておくことがリスク管理としては有用ではないか。