線維筋痛症に対する反復性経頭蓋磁気刺激法の治療有効性の検討
【O-0488:線維筋痛症に対する反復性経頭蓋磁気刺激法の治療有効性の検討、窪内郁恵、第50回日本理学療法学術大会、2015.】
<線維筋痛症:Fibromyalgia(FM)>
・3カ月以上持続する原因不明の全身痛を主症状とした、精神・自律神経系症状を伴う慢性疼痛疾患。
・中高年の女性に多く、日本では推定200 万人以上の患者がいるとされている。
<経頭蓋磁気刺激法:Transcranial magnetic stimulation(TMS)>
・磁気エネルギーを媒体として、頭蓋骨の抵抗を受けずに大脳皮質を刺激することができる治療法。
<反復性経頭蓋磁気刺激法:Repetitive TMS(rTMS)>
・アメリカ食品医薬局より薬物治療抵抗性うつ病への治療的使用が承認。
・副作用は非常に少なく、安全性が高いと言われている。
<対象>
・線維筋痛症12例中rTMS治療の全過程を終了した9例。
・入院対応4例、外来対応5例
・平均年齢:44.7±13.9歳
・全例歩行自立レベル。
・ACR2010線維筋痛症予備診断基準(FAS31):平均総得点18.6±5.8点
・平均広範囲疼痛指数(WPI):11.6±4.8点
・平均症候重症度(SS):7±1.3点。
・除外項目:rTMS装置の絶対禁忌・相対禁忌である人工内耳、頭蓋内金属使用などの開頭手術歴、てんかんの既往、人工ペースメーカーなど。
<方法>
・rTMSを左前頭前野に10Hzの高頻度刺激を行った。
・標準治療時間:4秒間刺激、26秒間休息の繰り返しで約40分、これを週3~5回、合計30回施行。
<結果:rTMS施行前、施行10回、20回、30回>
1)有意差なし
・FAS31の総得点、WPI、SS。
・痛みの質:NPSI(神経障害性疼痛重症度評価ツール)。
・認知・心理面:PCS(痛みの破局的思考評価)、継時的には減少。
・不安・抑うつ:HADS、減少傾向。
・生活の質(QOL):JFIQ(日本語版線維筋痛症質問票)、減少傾向。
2)rTMS施行前に比べて、施行20回、30回で有意差あり
・痛みの強度:VAS
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【線維筋痛症】
<有病率>
・日本では1.7%(松本-2006)。
・米国では2%、50歳以上の女性の場合、男性の6倍以上(Wolfe-1995)。
<特徴>
・視床下部、下垂体、副腎系といった神経、内分泌、免疫系の不調が存在(浦野-2008)。
・患者の57%はPTSDの既往がある(Cohen-2002)。
<脳機能の低下>
・帯状回の体積がへる 。
<睡眠>
・non-REM睡眠の異常により全身痛が出現する(浦野-2008)。
・外的な刺激の閾値が低く、睡眠障害をきたしやすい(McDermid-1996)。
<運動療法>
・運動のイメージングやプログラミングを含めた正常な運動経験を積み重ねることで正の可塑的変化を引き出すことが重要(森本-2008)。
・持続的ストレッチが疼痛の改善には有効(Jones-2002、Matsutani-2007) 。
・身体の活動性が高いほど、痛み刺激を与えた時の前頭前野背外側部、後部帯状回などの痛みを制御する領域の活動が高くなる。
参考文献
浦野房三:臨床痛の要因分析-線維筋痛症・脊椎関節炎の病態と臨床、理学療法25(9)、2008.
森本温子:痛み系と運動系のつながりからみた運動療法の可能性、理学療法25(10)、2008.
森山英樹:運動疾患に対するストレッチングの効果、理学療法学38(1)、2011.
篠浦伸禎:脳神経外科医が実践する ボケない生き方、2012
森岡周:痛みと情動の脳内機構とリハビリテーション、TAP講習会、2013
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