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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

「肩関節周囲炎 理学療法診療ガイドライン」より

村木孝行:肩関節周囲炎 理学療法診療ガイドライン理学療法学43(1)、2016.


<リスクファクター:推奨グレードB>

・糖尿病、甲状腺疾患、血中脂質高値、代謝、内分泌、血液内科系の関与、デスクワーク。


<経過>

・疼痛が先行して生じ、その後肩関節の可動域制限が進行。

・自然寛解し、12-42ヶ月要する。

 :複数のリスクファクターが重なると治癒が遷延化。


<特徴>

・患側肩関節周囲の皮膚温が低下傾向。

・烏口突起部の圧痛が顕著。

・上肢挙上時の肩甲骨上方回旋の代償的が大きい。

・上部僧帽筋の活動が下部僧帽筋より高くなる傾向。


<治療>


推奨グレード

エビデンスレベル

①一般理学療法運動療法+物理療法

B

2

徒手療法

B

2

③温熱療法、レーザー療法

B

2

④非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)

B

2

運動療法

B

3

⑥手術療法

B

3

ステロイド注射

C1

3

⑧超音波療法

C2

2


①一般理学療法運動療法+物理療法)

・症状や機能低下を改善。

・一般理学療法ステロイド注射、針治療:機能改善に差がない。

・一般理学療法ヒアルロン酸ナトリウム注射。

徒手療法

・組織の伸張やROM拡大を目的とした強度の強い手技が効果的。

・急性期からの積極的な関節モビライゼーションは他の治療よりもROMの改善が得られなかった。

・なにも治療を行わないものに比べて疼痛軽減や機能改善が得られる可能性があるが、他の手技や運動と比べて効果が得られるかどうかは不明。

③温熱療法、レーザー療法

・レーザー療法は短期の疼痛軽減に有効。

④非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)

理学療法と併用することよりそれぞれ単独よりも短期的での効果が得られる。

・NSAIDsと理学療法の併用は、麻酔科受動術より有効。

ステロイド注射

理学療法の併用による増強効果は得られていない。

・肩甲上腕関節内、肩峰下の適応やどちらが効果的かは不明。


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肩関節周囲炎を整形疾患だけとして捉えてはいけないのかもしれない。


リスクファクターでもあるように、代謝、内分泌、血液内科系の関与があり、結果として肩関節に炎症をきたしてしまっている場合が意外と多い。

これは、手根管症候群も同様で、なんらかの疾患の合併症や前駆症状などである可能性も考えられる。

この場合、過用や誤用によるものと少し分けて考える必要がある。


つまり、

1)過用や誤用、退行性変性などによる整形的肩関節周囲炎

2)代謝、内分泌、血液内科系などが関与しているそれ以外の肩関節周囲炎

3)整形的とそれ以外の混合型

が考えられる。


1)であれば、機能的-解剖的な問題点は比較的抽出しやすく、理学療法も有効で反応もよいものが多い。


しかし、2)と考えられるものは、機能的-解剖的な問題点があまり明確にならなかったり、局所的な理学療法の反応も悪く、治癒も遷延化しやすい。

感覚的には、肩が治りたがっていないような印象を受ける。

局所的でなく全身的なアプローチが必要かもしれない。