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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

MCI(軽度認知機能障害)と転倒との関係

【O-0716:MCIと転倒との関係、島田 裕之、第50回日本理学療法学術大会(東京)、2015.】

 

<対象者>
国立長寿医療研究センター老年症候群研究プロジェクトにおいて調査を受けた10885名7712 名(平均年齢73.2歳)

・除外基準:脳血管疾患、認知症パーキンソン病うつ病の既往を持つ者、要介護認定者、調査結果に欠損があった者(3173名)。

 

<調査項目>

・過去1年間の転倒回数、年齢、性別と服薬(4種類以上)、心疾患、呼吸器疾患、変形性膝関節症の有無、四肢骨格筋指数、Short Physical Performance Battery、座位や寝転んでいる時間(不活動時間)、MCI 判定のための検査(National Center for Geriatrics and Gerontology-Functional Assessment Tool)。

 

<認知的な群分け>

①正常群

②健忘型MCI単一領域群 :記憶障害+、認知機能障害なし

③健忘型MCI複数領域群 :記憶障害+、認知機能障害あり

④非健忘型MCI単一領域群:記憶障害ー、認知機能障害あり(一つ)

⑤非健忘型MCI複数領域群:記憶障害ー、認知機能障害あり(複数)

※認知機能(言語,遂行機能,視空間機能)

 

<結果:①/②/③/④/⑤>>

・MCI(Mild Cognitive Impairment;軽度認知機能障害):1800名(23.3%)。
・年間1回以上の転倒率:17.4%

 :16.7%/20.1%/22.6%/17.5%/19.9%

 :①に比べて③が高い危険性あり。

・年間2回以上の転倒率:5.5%。

 :4.9%/7.7%/11.1%/5.2%/8.3%

 :①に比べて②③⑤で高い危険性あり。

 

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歩行では、様々な脳の領域を使うので、脳機能が低下していくると転倒のリスクも高まります。

 

・歩行時に、補足運動前、一次感覚運動野で活動が増強(Miyai-2001)

・歩行30分後、一次運動野、補足運動野、運動前野、両側視覚野、小脳の一部に活動の増強(森-2005)

 

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【MCI(Mild Cognitive Impairment;軽度認知機能障害)】

・物忘れの訴えがあり、加齢に伴う記憶障害の範囲を超えた記憶障害が存在するものの、全般的な認知機能、日常生活動作は保たれ認知症とは呼べない状態。

・MCI患者は、2年後で5-9%の人が認知症を発症(正常者では1%)。

・軽度のMCIでは30-40%は正常に戻るため、軽度MCIレベルでの予防が必要。

 

<予防>

・着替えて外出、運動、知的な活動。

・運動と計算を同時に行うと、MCIから認知症に移行する危険が減り、記憶力が改善。

・運動は、軽度認知障害になる可能性を減らす(ヨナス・ジェーダ-2010)。

 

参考文献

・中澤公孝:歩行のニューロリハビリテーション、2010.

・第12回日本ヨーガ療法学会研究総会、2014

・島田裕之:認知症予防の簡単エクササイズ、2014

・奥村歩:MCI(認知症予備群)を知れば認知症にならない、2014

・脳を最適化する、2015