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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

大腰筋1):作用と機能

【大腰筋1):作用と機能】

 

<作用>

 

1)股関節屈曲

・股関節屈曲45°以上から股関節屈曲作用が大きくなる(Yoshio-2002)。

・股関節屈曲90°位からの等尺性股関節屈曲運動で大腰筋活動が最も大きくなる(Juker-1998)。

・屈曲の主動筋として作用するのに十分なテコの長さはない(Bogduk-1992)。

・前部線維:体幹運動時より股関節屈曲時の活動が高い(Park-2012)。

 

2)腰椎屈曲(前彎):

・前部線維(Park-2012)

・L3以下(市橋-2011)。

・腰椎前彎のコントロール(Gracovetsky-1988)

 

3)腰椎伸展:

・後部線維(Park-2012)。

 

4)腰椎同側側屈

・側屈モーメントは小さい(Ebrall-1994)。

 

5)腰椎対側回旋

 

6)股関節回旋

・報告がまちまちで一致を見ていない

・外旋作用(森-1982、Hislop-2003)。

・股関節屈曲時には、大きな外旋トルクを発揮すると考えられる(河上-2011)。

 

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<機能>

 

1)脊柱の安定化

・脊柱の抗重力伸展は、大腰筋による骨盤前傾が重要(吉尾-2011)。

・姿勢変化に関わらず腰椎前彎を変化させない機能を持つ(Santaguida-1995)

・腰椎に生じているモーメントはわずかで、大部分は圧縮と前方剪断力(Ebrall-1994)

・腰椎の前方への剪断力と圧迫力の発揮(Bogduk-1992)。

①後部線維:L1-5横突起~

・腰方形筋とともに腰椎を圧迫する作用(Richardson、Kisner-2008)。

・脊椎の分節コントロールに関与(Gibbons-2001)。

・腰椎の垂直方向の安定性に関与(Bogdk-1992)。

・椎体間の圧迫(Bogduk-1992)。

②前部線維:Th12-L5の椎体、椎間板側面

・脊柱と股関節の圧迫と運動を生じさせる(Bogdk-1992)。

 

2)大腿骨頭の安定化

・前方から大腿骨頭を骨盤に押し付け、拮抗作用を持つ殿筋群とともに股関節の安定性に寄与。

・股関節伸展位の方が伸張位で、大腿骨頭による圧迫もあり力を発揮しやすい(吉尾-2011)。

・股関節屈曲0-15°では大腿骨頭の安定化に作用(Yoshio-2002)。

 

3)立位-歩行

・脊柱を安定化し直立二足歩行姿勢の維持に関与(Yoshio-2002)。

・立位で持続的に活動(木村-2000)。

・上部腰椎に対して伸展モーメント、下部腰椎に屈曲モーメント(Bogdk-1992)。

 

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作用としては、股関節屈曲といった動的なイメージが強いですが、

 

機能的には脊柱や大腿骨頭の安定化といった静的な役割が大きいようです。

 

歩行に関しては、遊脚時の屈曲角度は20°程度なので、

 

遊脚時の股関節屈曲に求心性に使うというよりは、

 

立脚期の脊柱や股関節の安定に遠心性に使うという役割の方が重要かもしれません。

 

遊脚時の股関節屈曲角度は、Runでは50°、Sprintでは65°位になるので、

 

遊脚時の屈曲の作用としては、走運動で重要な役割をすることが考えられます。

 

狩猟民族にルーツをもつ人種で腸腰筋が太いのもうなずけます。