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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

.非特異的慢性腰痛を有する患者に対する神経生理学に基づいた患者教育の効果

三根幸彌:非特異的慢性腰痛を有する患者に対する神経生理学に基づいた患者教育の効果、理学療法学43(3)、2016

 

【PNE:pain neurophysiology education(Butler-2013)】

・生物心理社会モデルに基づいた痛みの神経生理学に関する患者教育。

 

<概要>

・痛みの神経生理学に関する知識(侵害受容、中枢感作、脳の可塑性、心理社会的因子の影響など)が様々な図や比喩を通して説明される。

・包括的な生物心理社会モデルに基づいて患者の痛みに対する新しい理解を促し、痛みの脅威を減少させることで症状を軽減することができると考えられている。

ex)侵害受容と痛みは同義ではないので、痛みを感じても組織損傷があるとは限らないなど。

 

<痛みと機能障害に対する効果>

○非特異的慢性腰痛の治療に有効(Clarke-2011)。

○個別、グループ共に機能障害に短期的効果があり、長期的効果に関しては個別の方か効果的である可能性(Moseley-2004)。

 

1)個別PNE

×水中運動との併用は、短期的効果がない可能性(Pires-2015)。

○機能障害を短期的に改善(Ryan-2010)。

▽全身運動教室との併用は、効果は減弱する可能性(Ryan-2010)。

×従来の患者教育と同様に、痛みと機能障害に対する有意な短期的効果はない(Moseley-2004)。

理学療法徒手療法と脊柱安定化運動)との併用は、総合診療医による治療と同様に機能障害に対して短-長期的効果がある可能性(Moseley-2002)

 

2)グループPNE

▽トリガーポイント鍼治療と併用は、機能障害に対する短期的効果を減弱する可能性(Tellez-2015)。

 

心理的尺度に対する効果>

 

1)個別PNE

×水中運動や全身運動教室との併用は、身体運動に対する恐怖や自己効力感を短期的に改善させるうえで有意な相乗効果はない(Ryan-2010、Pires-2015)。

▽個別PNEと解剖学-生体力学に基づいた患者教育ともに、破滅的思考や不適応思考を改善させるうえで短期的効果がない可能性(Moseley-2004)。

 

2)グループPNE

△トリガーポイント鍼治療との併用で、身体運動に対する恐怖に対して短期的に効果がある可能性(Tellez-2015)。

 

<まとめ>

△他の患者教育よりも優れているという明確なエビデンスはない。

△単独で用いることで痛み、身体運動に対する恐怖、自己効力感、破滅的思考を改善させるという明確なエビデンスは見当たらない。

△単独で用いた場合の、機能障害に対する効果は相反。

▽他の介入を組み合わせた場合に、効果が減弱する可能性が示唆。

 

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自分を変えることさえ困難なのに、

他人を変えるのは本当にできるのだろうか・・・

 

『私たちが生きることの本質は「苦」であることを認め、安定はない、すべては変わるのだ、と知った人には大きな勇気が生まれます。「すべてが変わる」ということは「すべては変えられる」ということです』 アルボムッレ・スマナサーラ