「脳卒中後疼痛の背景となる帯状皮質の活動上昇」
【O-KS-06-5:脳卒中後疼痛の背景となる帯状皮質の活動上昇、長坂和明、第51回日本理学療法学術大会、2016.】
<脳卒中後疼痛>
・特に視床に脳卒中が発症した数週間後に出現し、しばしば非侵害性の感覚刺激に対しても激しい痛みを感じるアロディニアを示す。
・痛みの他に、鬱や気分障害を併発。
<方法>
・成体マカクサル3頭に対して、視床後外側腹側核(VPL)の部位で脳出血を誘発。
・機械刺激と温熱刺激を手指に与え、回避するまでの圧と時間をモニターした。
<結果>
・損傷から4週以降、機械刺激と温熱刺激に対して、損傷半球と対側手指の回避反応が損傷前と比べて有意に増加した。
・刺激に対して、損傷側の前部帯状皮質の活動の上昇、損傷側の帯状皮質で活動の上昇が見られた。
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脳卒中後疼痛では、帯状回の活動が上昇することが示唆されています。
帯状回は、
辺縁系各部位を結びつける働きがあり、
情動反応、感情の形成と処理、学習と記憶などに関与します。
帯状回が、活性化する状況としては、
痛みの経験、不安情動、社会的排除(仲間はずれ)、妬みの感情、矛盾のモニタリングなどがあります。
また、主観的な痛みとの関係が強いく、
前帯状回は、痛みの情動的側面、認知的側面に関与し、痛みにより活動します。
ということで帯状回の活動上昇というのは、あまりよい状況では起こらないようです。
帯状回の活動を抑制するには、
・ニューロフィードバックよりコントロールが可能(deCharms-2005)。
・催眠暗示により痛みの不快感が緩和した場合、前帯状回の活動が抑制。(Rainville-1997) 。
運動も効果的のようです。
・walkingと比較してrunningでは、運動後に痛みを与えた時の中脳灰白質、前部帯状回脳梁膝周囲部、後部帯状回、中部島皮質の活動が減少。
・running後では、前頭領域、帯状回、島皮質、海馬のオピオイド結合が減少。
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参考文献
・森岡周;痛みと情動の脳内機構とリハビリテーション、TAP講習会、2013
・吉尾雅春、脳のシステム障害と理学療法、千葉県士会、2014