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.膝蓋下脂肪体がオスグッド・シュラッター病における膝関節機能に与える影響

【O-MT-11-1:膝蓋下脂肪体がオスグッド・シュラッター病における膝関節機能に与える影響、水島健太郎、第51回日本理学療法学術大会、2016.】

 

<対象>

1)健常群:8例16膝(男性5例、女性3例、平均年齢13.9歳)

2)OSD群:8例16膝(男性4例、女性4例、平均年齢12.9歳)

 

<方法>

・膝蓋下脂肪体の治療前後における膝蓋下脂肪体組織弾性、膝屈曲ROMを測定。

 

<結果>

・膝蓋下脂肪体組織弾性は、健常群に比べOSD群で高値を示した。

OSD群では、治療前の膝蓋下脂肪体組織弾性と屈曲ROMに負の相関が認められた。

 

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オスグッド・シュラッター病では、膝蓋下脂肪体(IFP)の硬さがあり、膝関節屈曲制限の因子になっている可能性があるようです。

IFPの硬さは、痛み、インピンジメント、拘縮などの要因にもなります。

 

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【膝蓋下脂肪体;Infrapatella fat pad:IFP】

 

・膝蓋靭帯の深部に位置し、膝関節の間隙を埋めている組織で深膝蓋下滑液包と協働して、同部の摩擦軽減と内圧調整に関わる。

・膝屈曲時に方へ移動する。

 

<痛み>

・無麻酔下の状態での関節内組織の疼痛感度を調べた結果、IFPが最も疼痛を感じた。

・炎症下では、脂肪体内のsubstance-pが侵害刺激に対する感受性を高めて疼痛を増幅させる。

・深屈曲、浅屈曲ではIFP内圧が高く、臨床所見と一致する。

 

<インピンジメント>

・膝蓋骨が下方偏位して上方移動が制限されたり、IFPの前方移動が不十分となり伸展時にインピンジメント様の疼痛が生じる。

・IFPが硬くなって動かなくなると横靭帯が引っ張れないので、半月板が前に出てこれなくなり、前方インピンジメントする。

 

<膝蓋骨不安定症>

MRI所見より、IFPの外側に限局した高輝度領域があり、膝蓋骨の不安定性がIFPの組織損傷に関与。

 

<思春期スポーツ障害膝(オスグッド病、有痛性分裂膝蓋骨)>

・深屈曲位におけるIFPの硬さは有痛群で有意に高い。

 

<膝伸展拘縮>

・IFPの関節腔への位置変化(6肢中全例)。

・拘縮により関節腔は線維脂肪組織に満たされ、容積は減少、消失。

 

参考文献

・三谷保弘:スポーツ障害に対する運動療法-膝関節、臨床スポーツ医学 2015年 08 月号

・林典雄:超音波画像診断技術の臨床への応用Ⅱ、理学療法学42(5)、2015

・林典雄:膝関節疾患における超音波診断装置の臨床応用、理学療法学40(3)、2013.

・今屋健:半月板損傷のリハビリテーション、 Sportsmedicin 149、2013

・井上隆之:ヒト関節拘縮病態の解剖学的観察、解析方法の検討、理学療法学38(3)、2011

・林典雄:運動器超音波解剖の関節拘縮治療への展開、理学療法学37(8)、2010..

・八木茂典:膝ACL再建術後のリハビリテーション、Sportsmedicine114、2009

・蒲田和芳:膝下腿外旋症候群、Sportsmedicine32-35、2001.