慢性閉塞性肺疾患対象者に対する運動療法の最前線
小林茂:慢性閉塞性肺疾患対象者に対する運動療法の最前線、理学療法学43(5)、2016
<慢性閉塞性肺疾患:Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPDの定義>
・タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症疾患。
・呼吸機能検査で正常に復することない気流閉塞を示す。
・気流閉塞は末梢気道病変と気腫病変が様々な割合で複合的に作用することによって起こり、 進行性である。
・臨床的には徐々に生じる体動時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とするが、これらの症状が乏しことがある(COPDガイドライン-2013)。
<身体活動量>
・身体活動性を向上させることが重要。
・COPD対象者は低活動で、生命予後との関係がもっとも強い(Vase-2014)。
・身体活動量を維持、改善することが予後に関係(Crcia-Aymerich-2006)。
・高活動群は他群に比べて予後が良好で、死亡原因にもっとも高いリスク要因は身体活動量(Waschki-2011)。
<運動療法:目的-効果>
・不活動性の悪循環を止めるとともに、心肺機能と低下した末梢組織としての骨格筋機能の改善。
・同一運動負荷に対する酸素摂取量の改善に伴い乳酸処理能力が改善し、乳酸産生が抑制される→ATレベルの改善につながる。
・筋組成の変化に伴い筋力、筋持久力が改善され、各動作の収縮効率が改善され、ADL動作の仕事率と仕事量が改善される。
・COPD対象者に対する運動療法は不安や抑うつを軽減(高橋-2016)。
・もっともエビデンスレベルの高い治療法として推奨(COPDガイドライン-2013)。
<運動療法の禁忌>
・不安定な循環器疾患、コントロール不良の高血圧症や糖尿病、急性の炎症性疾患、重篤な合併症がある場合(日本呼吸ケアリハ学会-2012)111)。
<認知機能>
・運動時の低酸素血症と日常の活動性の低下が認知機能に関与(小林-2013)。
・理解力の低下、記憶と学習障害、運動に関する機能が低下(Dodd-2010)。
・認知機能低下は脳血流還流配分の低下と関係(Ortrapamuk-2006)。
・慢性の低酸素血症のあるCOPDでは、同年代の健常者に比較して認知機能が低下しており、なかでも言語性の記憶が低下(Incalzi-1997)。
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COPD対象者には、身体活動性を向上させることが生命予後のためにも重要のようです。
運動療法が効果を示しますが、運動時の呼吸困難、全身状態の問題による倦怠感、認知機能の低下などにより、継続が難しいのが現状です。
とりあえず、タバコはやめましょう。