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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

第4回精神・心理領域理学療法部門研究会 身体性変容と精神神経疾患

3月10日は、第4回精神・心理領域理学療法部門研究会 「身体性変容と精神神経疾患」に行ってきました。

 

「身体変容と精神神経疾患」:畿央大学健康科学部理学療法学科 教授 森岡 周 先生

 

自己の身体認識に重要な脳の領域

1)EBA :シルエットに反応。三人称。

2)頭頂葉:感覚情報を統合。予測情報が入力される。

3)島皮質:内受容と外受容を結びつける。

 

・身体の喪失感や思いだるいという感覚は、視覚や感覚などの情報の不一致で生じる。

・意図しない情報だと、その感覚を抑制できない(自分でくすぐってもくすぐったくないが、他人がくすぐるとくすぐったい)。

 

<失行>

・左半球損傷で生じるが、身体認識の領域は右半身・・・なぜ?

 :視覚と触覚、視覚と固有感覚の統合は問題(機能障害)なし。

 :行動の予測機能に問題(機能障害)あり→前頭葉-頭頂葉ネットワークの機能不全?

発達障害の運動協調障害も同様のメカニズムと考えてよい。

 

統合失調症

・運動の意図はどこからきているのか?

 :運動前野の刺激→運動はかってに生じる。

 :頭頂葉の刺激 →運動は生じないが意図は生じる。

頭頂葉の機能が低下すると

 :主体性が低下する→だれかに操られてるなど・・・

 :適切な感覚抑制が生じず、他人の情報に干渉されやすい

 :健常者では、自分でしゃべるときは聴覚野が抑制されるが、聴覚過敏の場合は抑制されていない可能性。

・予測機能の破綻→前頭葉頭頂葉ネットワーク。

 :自分の行為がフィードバックされていない。

 :主体感がない→させたれ体験、幻聴など。

 

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整形疾患といえども上記のような脳機能やネットワークの機能不全が背景にあることは少なくありません。

特に、慢性疼痛などは、解剖学的要因、身体機能的要因、脳機能的要因、心理的要因、社会的要因、性格的要因などが絡みあって症状を呈しているので、整形クリニックといえども脳機能の知識はある程度押さえておく必要があります。

 

今回、興味深かったのは

1)身体の喪失感や思いだるいなど、という感覚は、視覚や感覚などの情報の不一致で生じる。

 

・特に高齢女性などでは、明らかに不良姿勢なのに、それを全く自覚していない症例がいます。このような場合は、自分の感覚と実際の情報が乖離している可能性があるため、そのようなことが腰が重いなどといった訴えにつながっていのかもしれません。圧迫骨折後などでアライメント修正に無理がある場合は、姿勢の方を改善させるのではなく、姿勢を認知させることも必要になってくるかもしれません。

 

2)大きく膨れた手(ダミーの手)を自分の手だと錯覚させる実験

→自分の手の痛み閾値が下がる人(痛みに過敏になった人)と閾値が変わらない人(痛みが変わらない人)に半々くらいになった。

閾値が下がった人は、大きい手を不快と感じ、自分の身体にこだわりが強い傾向。

 

・これも臨床的にはよく見られます。あまり明確でない腫れや形の違い(左右差)を訴え続ける症例は、総じて経過が長くなります。そのような左右差をなるべく意識させないように指導することが必要になります。

・左右は使い方が違うので何十年も使っていれば左右差がでて当然です。こちら側が、骨盤が曲がってるとか、足の長さ違うなどと左右差をことさら意識させてしまってることが多いのかもしれません。悪い学習(認識)をさせて、慢性患者をつくってしまってないでしょうか(商売的にはその方がいいのかも知れませんが)。

・また、こだわりの強い場合は、前頭葉の機能が落ちてきている場合も考えられます。