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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

.上後鋸筋の筋-筋膜性疼痛?

【上後鋸筋の筋-筋膜性疼痛?】

 

<症例>

・40代男性。

・左肩甲骨周囲の痛み。

・1年前くらいより出現。

・数か月おきに痛みが出現し、2-3Wで治まる。

・上肢症状-。

・XR)C5/6狭小化

 

痛みは肩甲骨の裏あたりだけどはっきりしないとの表現。安静時でも痛みがあり、首を動かしたりすると増悪する。

 

部位の肩甲骨周囲の痛みから考えると、C5/6の椎間板性が考えられ、レントゲン所見とも合致する。

しかし、1年前から増悪緩解を繰り返すという痛みの出方は、椎間板性っぽくない。

 

動作時痛は、頸部屈曲<伸展で痛み(+)・回旋や側屈は(-)。

痛みの出る頸部の屈伸の動かし方や屈曲時と伸展時の痛みの出たときの感じも、なんか椎間板性っぽくない。

試しに、頭部を上から圧迫して屈伸、頭部を軽く牽引して屈伸するも、痛みに変化なし。

 

胸椎周囲の脊柱起立筋の筋‐筋膜性かなと思い触診していくも、圧痛所見なく、訴えのある肩甲骨の裏側を試みるが、肩甲骨の動きが悪くなかなか困難。

しばらくトライし、ようやく、右手で肩甲骨を把持して少し浮かせながら、なんとか爪の方で触診。

すると索状物のような感じがあり、それを触診していると、「それですそれ!」と。

 

場所的には、上後鋸筋?かなという感じ。

しばらく、アプローチして、頸部屈伸をするとやや軽減している。

 

「首の椎間板などの影響も捨てきれませんが」・・・というと。

「いやいや、もうそれです」と。

 

よくよく聞くと、仕事で車の運転が多くなり、左肘を着いた姿勢でよく運転していたそうです。

もともと肩甲骨の動きが悪そうなうえ、左肘を着いた姿勢を多くしたため、肩甲骨下の圧迫が強まり、肩甲骨の下にある上後鋸筋の筋‐筋膜性疼痛が惹起されたのではないかと考えられました。

 

1週間後くらいにもう一度来院し、前回よりはだいぶ症状が改善しており、本人も原因もわかってすっきりしたし、大丈夫ということで終了になりました。

 

上後鋸筋の外側約1/2が筋腹になるので、肩甲骨が覆いかぶさってる部位は筋腹になります。

小胸筋、前鋸筋、菱形筋などのtightnessがあると、肩甲骨は肋骨に押し付けられるため、上後鋸筋にはストレスが生じると考えられます。

 

「後鋸筋(特に上後鋸筋)は、筋-筋膜性の疼痛に関与していることがあり、一般的に考えられているより臨床的意義がある(2001-Joel)」

 

<上後鋸筋のトリガーポイントによる痛み>

・痛みのパターンは広く、他の筋とも重なっているが、肩甲骨下の深い痛みが最も特徴的な症状。

・吸気時の鋭い痛みや肩後方、肘周囲、手首、手、小指、時には背中、上腕後方、前腕、胸部に出ることもある(1999-Simons)。

・小指の痛みは、上後鋸筋のサインでもある。

 

ということですので、頭の片隅に置いておいてもいいかもしれません。

 

参考文献

 

 

・河上敬介:背部の筋の形と位置、理学療法24(6)、2007

・Joel:Serratus posterior muscles: Anatomy, clinical relevance, and function、Clinical anatomy、2001