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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

多裂筋

横突棘筋の流れで、多裂筋へ。

多裂筋の作用は教科書的には、伸展、同側側屈、対側回旋とされていますが、

<回旋>
・回旋にはあまり関与しない。
体幹の回旋筋とは考えにくい(Macintosh)。
・回旋時に生じる回旋主動作筋の腹筋による屈曲作用の力を相殺する(Macintosh)。

<屈伸、側屈>
体幹伸展-屈曲、側屈方向への駆動力としては作用しないと考えられる。

などの報告があり、脊柱を動かす機能はあまりなさそうです。

しかし、脊柱から骨盤帯の安定性に重要な役割をしています。

<脊柱の安定>
・脊柱の支持に効果的に働く(Richardson-2002)。
・上下肢の運動に先行して体幹安定のために収縮
(Hodges-1997、1999)。
・腰椎の挙動を抑制し、neutral zoneの腰椎の剛性を増加させる(1995-Wilke)。
・前屈時に遠心性収縮を通して脊柱屈曲や前方剪断力をコントロールする。

<骨盤、仙骨の安定>
・多裂筋の活動による骨盤前傾は胸腰椎の安定性を高める(1998、1997-Keifer)。
・肛門挙筋とともに、仙骨の前後屈のコントロール作用を持つ(1997-Snijders)。

仙腸関節の安定>
・骨盤底筋群と協調して仙腸関節を制御している(2004-Pool)。
・腹横筋と多裂筋の特異的な収縮は仙腸関節の剛性を高める(2002-Richardson)。

<椎間関節、椎間板の保護>
・椎間関節の頭尾方向の滑走をコントロールし、脊椎上へのストレスと負荷の配分をコントロールする(2008-Richardson)。
・椎間関節、椎間板を保護する唯一の筋(1962-Lewin)。

見えないものに守られていますね。