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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

OF1-077「注意の分散は着地動作に影響を与える-二重課題実験による検討-」

OF1-077「注意の分散は着地動作に影響を与える-二重課題実験による検討-」和田 治
第46回日本理学療法学術大会 2011年


<目的>
ACL の代表的な受傷機転とされる片脚着地動作を用い、付加された注意要求課題が着地動作に与える影響を運動学および運動力学的に明らかにすること。

<対象>
・健常女性 11 名 (年齢:20.5 ± 0.7 歳)。

<方法>
・運動課題;30cm台からの利き脚での片脚着地動作。
・注意要求課題:被験者の正面に設置された左右のLEDに対して、両手に把持したスイッチを用い、左右LEDの点灯側をできるだけ早く押す。
・運動課題のみ、運動課題+注意要求課題の2条件で各5回ずつ計測。

<結果>
運動課題のみに比べて、注意要求課題を加えた場合
→接地時の股屈曲角度(p<0.05)、膝外反角度(p<0.05)が有意に小さい。
→最大膝屈曲時では、膝屈曲角度 (p<0.01)、足背屈角度 (p<0.001) が有意に大きい。

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・注意要求課題を与えると接地時の股関節屈曲角度と膝外反角度は減少し、最大膝屈曲時の膝屈曲角度と足背屈角度が増加しています。

・着地時の膝外反、浅い屈曲はACL損傷のリスクになります。
 →膝外反、膝内外旋(2004-Olsen、2008-Meyer)。
 →膝外反位+下腿外旋位でACL損傷の危険性(2002-三木)。
 →着地時に膝外反を呈する選手ほどACL損傷リスクが高い(2005-Hewett)。 
 →受傷時の膝屈曲角度は10~30°(2000- Boden)。

ということは、注意課題を与えた方がACL損傷のリスクは軽減するということになるのだろうか?
股関節の屈曲の減少をどう考えるか? 

通常の損傷場面では、疲労の影響も考えられるので、
身体が疲労している状態や注意要求課題の精度や反応スピードが落ちてきた時に、
どのような着地動作になるのかも興味あるところです。

ボールや相手のポジションなどへの注視や意識の影響は、
ボディイメージと実際の身体の位置の不一致を生じさせ、
ACL損傷の一つの要因となるのではと考えていたので、とても興味深い報告でした。