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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

.腰椎分離症

【腰椎分離症】

<特徴>
・発症率、5.6%。
・小中学生では、2週以上続く腰痛患者の45%が分離症であった。
体幹回旋動作多い競技では、利き手と反対側に発症が多い。

<要因>
・オーバーユースによる疲労骨折との説が有力。
 →10代では特にL5の椎間関節突起部(pars)の骨化が不十分なため。
 →parsには伸展運動で最大、回旋時にも高い応力が生じる。

バイオメカニクス
・pars内の高ストレス域は、伸展時の左右対称で環状断に近く、回旋時には反対側で矢状断に近い。
 →骨折線が環状断に近い場合は腰椎伸展運動が主因。
 →片側分離症で骨折線が矢状断に近い場合は反対側への回旋運動が主因。


MRI
・pedicle(椎弓根)の骨髄浮腫
 →初期分離症の可能性がきわめて高い。
 →癒合の可能性は残っている。

<保存療法>
・分離発症後4~5週間は骨吸収期のため、3ヶ月は体幹固定を行う。
・スポーツ活動中止後約1ヶ月間の骨吸収期が存在し、その後骨形成期へと移行。
・新鮮分離期に適切な保存的治療を受けた症例では、椎弓分離部に骨癒合が得られなくても分離部椎弓に骨萎縮が起こらず、分離すべり症に進展する例は少ない。
1)小~中学生
・スポーツ中止し体幹装具を用いて分離部の骨癒合を目指すのが原則。
・初期ならば3ヶ月、進行期なら6ヶ月を目安として、その間スポーツ活動は休止する。
2)高校生
・低信号で骨癒合が困難な場合は、スポーツ用のナイトブレースを使用し、NSAIDsを併用しながらスポーツ復帰を促す。

<治療成績>
・3ヶ月間の保存療法により初期の分離では73%、進行期では38.5%の骨癒合を認めた。
・初期分離では85%、進行期分離でMRI上浮腫が陽性の場合56%で癒合した。

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・小中学生に関しては、早期診断と早期治療(スポーツ中止と体幹装具)により、骨癒合を目指し、腰椎分離すべり症への移行を防ぐのが大切。
・回旋動作を伴うスポーツ(野球やサッカーなど)をしていて、腰を反ると痛いような場合は、早めの受診が必要。

理学療法開始時には、痛みの問題はクリアになっていることが多いが、スポーツ休止によるコンディションの低下や腰椎の伸展や回旋ストレスの要因をつぶしておくことが大切。
・腰椎の伸展、回旋ストレスの要因の一つとしては、股関節の伸展、回旋の可動域制限や股関節-骨盤帯の機能不全が考えられる。
・キックやスイング動作を腰椎でなくて股関節を意識させることが必要かもしれない。

引用/参考文献

臨床スポーツ医学 2013年 08月号 [雑誌]

・酒巻忠範:学校スポーツにおける腰椎分離症の装具療法、臨床スポーツ医学30(8)、2013

臨床スポーツ医学 2008年12月号 Vol.25 No.12

・河合将紀:Low gradeな腰椎分離すべり症に対する内視鏡下分離部神経根除圧術、臨床スポーツ医学25(12)、2008.
・西良浩一:腰椎分離症の疫学と発生メカニズム、臨床スポーツ医学25(12)、2008.
・南和文 :腰椎分離症の画像診断、臨床スポーツ医学25(12)、2008.
・吉田徹 :腰椎分離症の保存的治療法、臨床スポーツ医学25(12)、2008.
・武政龍一:腰椎分離症に対する観血的治療法、臨床スポーツ医学25(12)、2008.

成長期のスポーツ障害とリハビリテーション (MB MEDICAL REHABILITATION)

・大久保雄:成長期の脊椎スポーツ障害とリハビリテーション、MB Med Reha96、2008.
・菅原一博:成長期スポーツ腰痛に対するリハビリテーション、MB Med Reha96、2008.
・吉田仁郎:スポーツ腰椎分離症の保存療法、MB Med Reha 98、2008.
・武政龍一:腰痛を呈する疾患とその治療:腰椎分離・分離すべり症、MB Med Reha 98、2008.

臨床スポーツ医学 2008年7月号 Vol.25 No.7

・西良浩一:発育期分離症に対する装具療法、臨床スポーツ医学25(7)、2008.

Sportsmedicine

・西良浩一:腰椎分離症の研究、Sportsmedicine 114、2009.