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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

.肩峰下インピンジメント

高濱照:関節病態の評価に不可欠な動的解剖、理学療法学37(4)、2010.」より

<解剖所見による肩峰下での考えられる衝突部位>

1)肩屈曲30°程度
・棘上筋腱と肩峰前方部分が衝突。
・正常肩では、棘上筋腱と肩峰下は肩の挙上で常に衝突。
・この部位での痛みはほとんどないと考えられる。

2)肩屈曲60°程度
・大結節が肩峰下に入る。
・棘上筋腱と大結節では、大結節の方が高位になるため棘上筋腱は肩峰下に衝突しない。
・大結節は肩峰下と擦れ合うが、肩峰下滑液包に覆われているため摩擦しても問題はない。

3)肩の最大挙上位(impingement sighの肢位)
①肩峰下-大結節稜
・硬部組織なので衝突しても問題ない。
②後上方関節唇-棘上筋腱板内面
・いわゆるinternal(関節内)impingement
・運動痛および腱板関節内断裂の原因(Walch-1992)。
・正常で起こる衝突で、腱板内面は関節包であり関節唇内面と摩擦しても問題はない。
・衝突部位に加わる分力も小さく、痛みがあった場合は他の部位と考えた方が良い。

4)肩屈曲90°で内旋(Hawkinsのimpingement sighの肢位)
①烏口上腕靭帯(CAL)-棘上筋腱
・CAL前面に棘上筋腱が衝突し運動痛が再現される(Hawkins-1980)。
・CALの下に棘上筋腱があり衝突しているが正常の状態。
・棘上筋腱に圧痛があれば運動痛の発生部位と考えられる。
②肩峰-棘下筋腱-上腕骨頭
・棘下筋上縁は肩峰角の下にあり、水平内転-内旋により肩峰角と骨頭に挟まれる。
・正常の状態であるが、棘下筋上縁に圧痛、炎症があれば痛みの要因となる。

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解剖遺体を動かした所見からは、通常の屈曲では肩峰下と腱板によるインピンジメントはあまり問題にならないようです。

肩挙上で痛みの出る場合は、肩峰下滑液包炎、関節唇損傷、腱板断裂など考慮する必要があります。
また、腱板断裂例での無症候性、挙上時は痛くないが戻す時に痛い例などから、解剖的な問題だけでなく、筋収縮などの機能的な影響がインピンジメント様の痛みを出していることも考えられます。

肩屈曲90°で内旋位では、CALと棘上筋腱、肩峰角と上腕骨頭の間の棘上筋腱でのインピンジメントが問題となりそうです。
この肢位でのインピンジメントは投球障害の参考になります。