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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

.肩峰下インピンジメント症候群ー投球障害肩

【肩峰下インピンジメント症候群ー投球障害肩 】 

 1)肩後方組織の硬さ
・肩峰下インピンジメントでは、後方関節包の肥厚(Harryman-1990、Ticker-2000)、後方関節包の長さの低下(Neer-1983)、外旋筋の短縮がみられる。
・投球動作で肩後方組織の硬さがある場合では、上腕骨頭が前方に押し出され、徐々に前方関節包を伸張させ、関節内不安定が出現し、肩峰下インピンジメント徴候が出現する(Neer-1990)。
・cocking phase
 
2)肩甲骨上方回旋の不足
・肩峰下インピンジメントでは、僧帽筋中部-下部、前鋸筋の機能低下があり、小胸筋、僧帽筋上部の過緊張や短縮が見られる(Cools-2002、Ludewig-2000、Borstard-2005)。
・これらの筋機能の影響により、肩挙上時に肩甲骨の後傾、上方回旋が不足する。
・上方回旋の不足では、上腕骨と烏口肩峰靭帯のインピンジメントを引き起こす可能性がある。
・cocking phase → acceleration phase
 
3)肩屈曲90°での内旋
・リリース直後では急激に肩内旋が生じる。
・烏口上腕靭帯と棘上筋腱の衝突、肩峰と上腕骨頭間での棘下筋腱の挟み込みが生じる(高濱-2010)。
・acceleration phase → follow through phase

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対応としては、

1)肩後方組織の硬さ
①棘下筋のoveruseによるtightness
・cocking phaseまでの肩外転時に棘下筋を過剰に使っていることが推測される。
・肩外転初期には肩甲骨は軽度内転位に保持される必要があるが、僧帽筋中部-下部の機能低下があり肩甲骨の保持機能が弱いと、外転筋でもある棘下筋が過剰に働きtightnessが生じる可能性がある。
②後方関節包の伸張ストレスによるtightness
・follow throughでの肩内旋が、後方関節包の伸張ストレスを生じ微細損傷を繰り返すことでtightnessが生じることも考えられる。
・投球時に肩内旋の依存度が高い場合(手投げ)は、下肢からの運動連鎖や体重移動がうまく行えていない可能性もある。
※最近、後方関節包の硬さはないのではとも言われている。

2)肩甲骨上方回旋の不足
僧帽筋中部-下部、前鋸筋の機能改善、小胸筋、僧帽筋上部の過緊張や短縮の改善。

3)肩屈曲90°での内旋
①烏口上腕靭帯と棘上筋腱の衝突
・肩甲骨に対する上腕骨の前方移動が多い場合が影響するかもしれない。
・棘下筋の遠心性収縮の機能や肩の後方tightnessが影響するか?
②肩峰と上腕骨頭間での棘下筋腱の挟み込み
・肩甲骨に対する上腕骨の前方移動が少ない場合や棘下筋のtightnessや肥大が影響するかもしれない。

と一応あげてみたものの、肩甲骨はもとより鎖骨や胸郭などの影響も受けるので一概には言えなそうです。

大雑把には、
肩甲骨の上方回旋や後傾の動きを出すこと
 →小胸筋tightness、僧帽筋中部-下部、前鋸筋の機能不全はないか
2)棘下筋の機能低下やtightnessはないか
3)手投げになっていないか

参考文献

千葉慎一:腱板断裂に対する理学療法肩関節傷害 診療の真髄 (MB Medical Rehabilitation(メディカルリハビリテーション)).2013

高濱照:関節病態の評価に不可欠な動的解剖、理学療法 第37巻第4号、2010

川村真史:肩のバイオメカニクス(1)肩甲上腕関節、第2回SPTS、2006.
能由美:肩のバイオメカニクス(1)骨形態、第2回SPTS、2006.
永野康治:肩のバイオメカニクス(3)肩甲胸郭機構、第2回SPTS、2006.
小笠原雅子:肩のバイオメカニクス (5)肩鎖関節-胸鎖関節、第2回SPTS、2006.
松本大士:投球障害肩(5)手術療法と後療法、第2回SPTS、2006.

Sahrmann:運動機能障害症候群のマネジメント理学療法評価・MSIアプローチ・ADL指導、2005.