運動の筋肉由来内分泌因子分泌に対する影響
渡辺圭一:運動の筋肉由来内分泌因子分泌に対する影響、運動・物理療法21(3)、2010
<対象>
・日常的に運動を行っていない健常成人男性10名(25.6±0.8歳)。
<方法>
・早朝空腹時に自転車エルゴメーターで30分間の運動。
・目標心拍数は予備心拍数の70%。
・運動直前、運動10分後、運動60分後に評価。
<結果:統計学的有意差あり>
1)運動前<運動10分後、運動60分後
・血漿IL-6濃度、血清クレアチニンキナーゼ、血中乳酸濃度、血漿成長ホルモン濃度。
2)運動前>運動10分後、60分後
3)運動前<運動10分後>運動60分後
・脈拍
4)運動前、運動10分後<運動60分後
・血中白血球数
5)変化なし
・血漿BDNF濃度(運動10分後で平均値は増加)、血漿グレリン濃度。
・赤血球数、血清クレアチニン、血清尿素窒素、総コレステロール、HDLコレステロール、ナトリウム、カリウム、クロール、マグネシウム、高感度CRP。
・拡張期血圧。
※自転車エルゴメータ30分で、血中IL-6濃度の有意な上昇を認めた。
※BDNFは運動10分後で平均値は増加したが有意な上昇が認められなかった。
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<IL-6:interleukin-6>
・糖代謝、脂肪代謝の活性化、造血幹細胞の活性化、神経修復の活性化等を有する多機能サイトカイン。
・筋肉由来内分泌因子(マイオカイン)で筋肉の損傷や収縮による能動的な分泌が考えられている。
・糖尿病患者に関しては、
→IL-6などの炎症性サイトカインが増加している。
→筋肉組織での異化作用を亢進させるため筋力低下に関与。
→筋肉からのIL-6分泌亢進が運動によるインスリン感受性の改善。
・運動による変化としては
→自転車エルゴメータ30分で、血中IL-6濃度の有意な上昇。
→暑熱環境下での運動が血清IL-6を上昇。
能動的な筋の運動による分泌と慢性的な筋の損傷(炎症)による分泌では、少し意味合いが変わってくるのかもしれません。
参考文献
平木幸治:糖尿病を合併した急性心筋梗塞患者の運動耐容能低下の関連因子、理学療法学38(5)、2011.
南雲吉則:50歳を超えても30代に見える生き方、2011