.乳癌術後リハビリテーションにおける肩関節可動域運動の開始時期の検討
根岸智美:乳癌術後リハビリテーションにおける肩関節可動域運動の開始時期の検討、理学療法学、2016
<対象>
・乳癌と診断され、乳房切除術と腋窩リンパ節郭清術もしくはセンチネルリンパ節生検を施行した女性22例(年齢39-88歳、平均年齢64.8歳)。
・胸筋温存乳房切除術かつセンチネルリンパ節生検15例。
・胸筋温存乳房切除術かつ腋窩リンパ節郭清術7例。
・臨床病期:0期0名、Ⅰ期12名、Ⅱ期8名、Ⅲ期2名、Ⅳ期0名。
<方法>
・肩関節可動域運動のリハビリテーションを日曜日以外、1回につき20-30分、積極的に実施。
・自主トレーニングは、棒体操、羽ばたき運動など指導。
・抜去前群13名:ドレーン抜去前の術後5日目に開始。
・抜去後群9名:ドレーン抜去後に開始。
<結果:前群/後群>
1)ドレーン総排液量:410.2±110.9ml/406.2±135.5ml、群間差なし。
2)ドレーン留置期間:7.4±1.1日/6.8±1.1日、群間差なし。
3)入院期間:10.4±1.1日/14.3±1.8日、有意差あり。
4)退院時の肩関節可動域
①屈曲:174.6±9.6度/172.2±8.3度
②外転:173.1±10.3度/168.8±10.5度
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<乳癌術後のリハビリテーション>
「生活指導および肩関節可動域訓練や上肢筋力増強訓練などの包括的リハを実施することは、指導書を渡すのみ、もしくは家庭での自主練習のみを行う場合に比べて、患側肩関節可動域の改善、上肢機能の改善がみられるので、行うよう強く勧められる」(推奨グレードA)
<乳癌術後のリハビリテーション:肩関節可動域運動の開始時期>
・術後5-7日からの開始を推奨:グレードA
:術後0-3日と5-7日では、術後6週以上では可動域で差がない(Lotze-1981、Suhultz-1997、Abe-1998McNeely-2010)。
:早期開始群では、ドレナージ排液量や漿液腫は多い(Lotze-1981、Suhultz-1997、Abe-1998M)。
<乳癌術後の肩関節可動域制限の原因>
・術後疼痛、軟部組織欠損による皮弁間張力、創の瘢痕拘縮、末梢神経障害による痛みや痺れ、腋窩のつっぱり感、心身面での不安。
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乳癌術後の肩関節可動域運動の開始時期は、先行文献と同様に、術後5日目くらいからが推奨されるようです。
退院時、しかも平均年齢64.8歳の肩関節屈曲や外転が170度もあるってゆうのはちょっとびっくり。