片頭痛1)(閃輝暗転、CSDなど)
【片頭痛1)(閃輝暗転、CSDなど)】
片頭痛の前兆として閃輝暗転という視覚障害が生じることがあります。
最近は、片頭痛や閃輝暗転は、CSDという現象の後に生じると考えられています。
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<発症メカニズム(病態仮説):三叉神経血管仮説>
・現在もっとも受け入れられているのは三叉神経血管仮説(Moskowitz-1993)。
・脳実質を含む脳膜、特に硬膜の炎症と血管の収縮拡張が片頭痛を惹起する。
<なんらかの原因(遺伝子異常、食事、ライススタイル、環境など)>
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<CSD:cortical spreading depression/皮質拡延性抑制>→視覚的前兆(閃輝暗点)
↓
1)硬膜侵害刺激受容体の活性化と局所の炎症 → 痛み
2)三叉神経血管系の活性化
↓
三叉神経終末(硬膜動脈、脳軟膜動脈)より炎症性神経伝達物質(SP、CGRPなど)が放出
↓
局所無菌性炎症
↓ ・感覚神経の疼痛閾値を下げる → 痛み
↓ ・支配血管の拡張→血管に分布する疼痛神経に刺激 → 痛み
↓ ・周囲への血漿蛋白漏出
↓ ・血管内皮障害
↓ ・血小板凝集による血管内へのセロトニン放出
↓ ・白血球粘着能の上昇など
1)三叉神経の順行性刺激伝達
・悪心、嘔吐など脳幹反応
・自律神経症状
・視床や大脳皮質 → 痛み
2)三叉神経の逆行性刺激伝達
・炎症性神経伝達物質の遊離促進→血管拡張、炎症を助長 → 痛み
<CSD:cortical spreading depression/皮質拡延性抑制>
・神経細胞の興奮や神経伝達物質の放出がおき、脳皮質の脱分極が血流低下とともに主に後頭部から前方に広がっていく現象。
①頭痛
・硬膜侵害刺激受容体の活性化と局所の炎症を起こし、頭痛を引き起こす(Ayata-2006)。
②三叉神経への影響
・脳硬膜を支配する三叉神経線維の活性化が生じる(Zhang-2010)。
・皮質を灌流する血管に分布している三叉神経終末を興奮させる(Bolay-2002)。
→CSDが頭痛発作を惹起するが、CSDを起こすtriggerは不明。
③視覚的前兆(閃輝暗転)
・前兆、特に視覚的前兆を示唆され、functional MRにより同様の現象が確認(Hadjinkhani-2001)。
・前兆のない片頭痛でも、神経症状を呈さない領域で神経細胞の活動性が変化しCSDが生じている可能性がある(Goadsby-2001)。
→閾値の高低、前兆を打ち消す因子の存在などにより前兆を自覚していない可能性。
→閾値は、遺伝的素因、女性ホルモン、薬物、食事、天候、ストレスなどにより影響(Bolay-2002)。
<なんらかの原因(誘発因子)>
1)遺伝子異常:家族性片麻痺性片頭痛(familial hemiplegic migraine:FHM)
・CSD誘発の閾値を低下させ片頭痛発症に関与(Ophoff-1996、Vanmolkot-2003、Dichgans-2005)。2)食品
・チョコレート、乳製品、アルコール、柑橘類、揚げ物など(Rasmussen-1993)。
3)ライフスタイル
・ストレス、精神的緊張、空腹、睡眠不足、睡眠過剰。
4)天候の変化
・慢性痛モデルラットでは、人工的な気圧低下、低温環境の暴露で痛みが増強し、気圧変化には内耳器官が関与(Funakubo-2010)。
・低気圧下では、三叉神経脊髄路核の神経細胞の活動性が上昇(Messlinger-2010)。
5)視覚刺激:明るい光、焔、光の点滅など
・視力障害を持つ片頭痛患者においても光刺激により片頭痛発作が増悪(Noseda-2010)。
・動物実験では、脳硬膜の侵害刺激を受容する神経線維は視床後核神経細胞と連絡があり、その活動は光刺激による調節を受けるとともに、大脳皮質の体性感覚野や視覚野に神経線維を投射しており、光刺激による誘発を説明している可能性が示唆(Noseda-2010)。
5)月経
6)卵円孔
・患者のほぼ半数で心臓に「卵円孔」と呼ぶ2~3ミリの穴が見つかっている。
→肝臓でできたセロトニンが穴を通って脳の動脈に入ることが頭痛の原因とみられている。
・片頭痛がある脳梗塞患者19人に「卵円孔」をカテーテルでふさぐ手術を実施したところ、18人は頭痛が消えたり、症状が改善したりした。
7)その他
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参考文献
・清水利彦:片頭痛の病態研究および治療に関する最近の知見、臨床神経学51(2)、2011
・古和久典:Cortical spreading depressionとpain、臨床神経54、2014