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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

「認知神経科学に基づく疼痛治療」より

住谷昌彦:認知神経科学に基づく疼痛治療、理学療法学39(8)、2012.

・大脳一次体性感覚野(S1)と一次運動野(M1)には、Penfieldの小人と呼ばれる身体部位に応じた受容野(体部位再現地図)が観察される(Penfield-1954)。

・強い痛みや異常感覚を訴える症状では、この体部位再現地図に変化が生じており、患肢領域の体部位再現地図の縮小は、病的痛みの強さと相関があるといわれている。
①CRPS
・患肢領域が縮小し、顔面が拡大(Pleger-2004)。
・本来の位置から離れるほど痛みの強度が強くなる(Maihofner-2004)。
幻肢痛患者
・切断肢に対応する部位が縮小し、顔面が拡大(Flor-1995)。
③脊髄損傷後疼痛
・両下肢の部分が縮小し、顔面や手が拡大(Wrigley-2009)。

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筋肉でいう萎縮のような状態が、患肢の脳の受容野で起こっているということで、これが痛みや異常感覚の要因になるようです。
その要因として、感覚情報の不一致や感覚情報と運動の不一致があげられます。
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・身体部位の視覚情報と体性感覚情報が合致しなければ自分の身体の一部であると認知出来ない。
・自己身体の帰属感が失われるとその身体部位の皮膚温が低下(Moseley-2008)
・CRPS患者の運動障害は患肢の視覚情報と体性感覚情報の統合の障害に起因。
・健常者でも自己身体に関する視覚情報と体性感覚情報が一致せずに知覚-運動ループが破綻すると、疼痛などの異常感覚が出現する(McCabe-2007)。
・知覚-運動ループは病的疼痛の発症メカニズムと密接に関わっている(Harris-1999)。

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視覚情報と体性感覚の不一致 → 知覚-運動ループの破綻 → 痛みや皮膚温低下など。
自分の手や足が何処にあって、どう動いているのか?
目で見ている情報と自分で感じている情報が乖離していたり、それらを統合した感覚情報と実際の動き一致していなかったりすると痛みなどの問題が生じてくるようです。
これらを改善するには、視覚情報と体性感覚情報、統合された感覚情報と運動を一致させることが必要になります。
視覚情報と体性感覚情報の所に問題があるのか?
感覚情報と運動の所に問題があるのか?
体部位再現領域の縮小は改善するのであきらめてはいけない。
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①CRPS患者
・体部位再現領域の縮小は、治療(理学療法、非ステロイド療法、抗うつ薬)により改善し、感覚受容野間が拡大(Maihofner-2004)。
幻肢痛患者
・鏡療法のような視覚入力による幻肢の運動訓練により、患肢を表象する体部位再現地図が拡大(MacIver-2008)

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ボディイメージの低下、知覚-運動ループの破綻は、一般的な整形疾患(腰痛など)でも考えられます。
一般的な整形疾患でも、痛みや可動域の問題ではないのに、身体を正中位にしたり、膝や足の位置を反対側と合わせようとすると不快な感じを持ったり、ベッドに対して真ん中に寝ていなかったり、側臥位で傾斜していたりする場合が見られます。
腰痛や膝痛でも、感覚情報の擦り合わせ、感覚情報と運動の擦り合わせは大事だと考えています。
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参考・引用
森岡周;痛みと情動の脳内機構とリハビリテーション、TAP講習会、2013