「橈骨遠位端骨折における手関節尺側部合併損傷」
PI2-261「橈骨遠位端骨折における手関節尺側部合併損傷-早期運動療法の危険性について-」 小原 由紀彦(MD): 第46回日本理学療法学術大会、2011年
<対象>
・橈骨遠位端骨折に対して手関節鏡、遠位橈尺関節関節鏡視と観血的整復固定術を行った133例135手(平均61.0歳)。
・術後1年以上経過した症例で、可動域、痛み、握力、Mayo Wrist Score を比較検討。
A群:術後の外固定はせずに早期運動療法を施行した37例。
B群:3週間の外固定ののち運動療法を施行した52例。
<結果:A群/B群>
・橈骨遠位端骨折の28%にTFCC剥離損傷が合併。
1)可動域(健側比) :90.6%/91.1%
2)握力(健側比) :86.0%/85.0%
3)Mayo Wrist Score :89.2点/90.5点
4)手関節痛 :6例16.2%/2例3.8%
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・橈骨遠位端骨折の術後1年では可動域、握力に差が認められないが疼痛はA群に多い。
→早期運動療法は推奨されない。
・早期運動療法で痛みが残存する要因の一つとして、TFCC※の剥離損傷が合併していることがあげられています。
・手関節尺側部は、TFCCや尺骨の突き上げなどにより痛みが生じると改善に難渋することが多い部位です。
・痛みが生じないような環境をつくるということでは、損傷部位が安定するのを待つということも大切です。
※ TFCC:三角線維軟骨複合体
・橈骨-尺骨-月状骨-三角骨に囲まれた領域に位置する靱帯-線維軟骨複合体。
・三角線維軟骨、三角(橈尺)靱帯、尺骨月状骨間靱帯、尺骨三角骨間靱帯、尺側手根伸筋腱鞘床、尺側関節包などから構成。
機能は、
・前腕回旋運動の制御
・遠位橈尺関節での回内外運動の制御
・尺屈時のクッション