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整形外科クリニック理学療法士のひとり言。読んだ本、理学療法、サッカー観戦などとりとめなく

ビタミンD

ビタミンD

 

先日のJones骨折のリスク因子でも登場しましたが、ビタミンDはかなり重要な栄養素です。

骨はもちろんのこと、筋肉や神経系など様々なところに影響があり、多くの疾患にも関与します。

 

<機能・効果>

①骨の健康維持

・カルシウムの腸管からの吸収を促すことで、骨形成に重要な役割。

・不足することで、骨粗鬆症や骨折のリスク因子になる。

 

②筋肉量の維持-改善

・筋力を高め、運動後の筋肉修復や再生が早まる

 

③高齢者の転倒予防

・筋と神経の協調性を高め、重心動揺を減らす方向に働くのではないか(2004-Bischoff)。

・転倒経験者では、血清25-OHD濃度(ビタミンD)が低値(1999-Stein)。

・骨格筋の萎縮や筋力の低下にかかわるビタミンD不足により転倒のリスクが高まる。

 

④免疫力の維持、強化

 

⑤睡眠

・睡眠パターンの改善、日中の強い眠気に関連。

 

⑥その他

エストロゲンを活性化。

・歯のフッ素沈着の改善(Ca、ビタミンCとの併用)。

 

 

<疾患>

骨粗鬆症

骨粗鬆症による骨折予防に有効。

・摂取により椎体骨の骨折予防ができる。

・進行予防予防のために、400-800IUのビタミンD 、1500mg/日のCaの摂取と適度の運動が必要。

・Caとの併用で、長期間ステロイドを使用している人における骨密度減少の抑制。

血中濃度が20ng/ml以下になると股関節骨折になるリスクが高まる。

 

②がん

血中濃度が20ng/ml以下になると発症リスクや死亡が高まる。

・濃度が最も低いグループに比べ、がんのリスクが19~25%低下。

血中濃度が高いと肝臓がんになるリスクが低下し、濃度が最も高いグループの発症リスクは、最も低いグループの約半分。

・乳がんの予防。

 

アルツハイマー認知症

血中濃度10ng/ml未満の人は20ng/ml以上の人に比べて認知症のリスクが1.54倍。

・不足すると認知症アルツハイマー病にかかるリスクが通常の濃度の人に比べて約1.5〜2倍。

アルツハイマー患者では25-OHDが低値(1998-Sato)。

 

④変形性膝関節症

・不足により痛みが強くなり、歩行困難も悪化(McAlindon-2007)。

 

⑤糖尿病

血中濃度が30ng/ml未満の人は50ng/ml以上の人よりも糖尿病発症リスクが5倍高い。

 

⑥関節リウマチの予防

 

動脈硬化、高血圧

・血管の病気の予防や高血圧症の改善に効果。

 

⑧心疾患

血中濃度が20ng/ml以下になると心筋梗塞の発症リスクや死亡が高まる。

血中濃度が25ng/ml以下になると心疾患のリスクが高まる。

 

⑨インフルエンザ

・インフルエンザや風邪などの急性呼吸器感染症のリスクが下がる。

 

⑩アレルギー疾患

・花粉症などのアレルギー各種に効果。

 

自閉症

・妊娠中の母親の血中濃度が10ng/ml未満の場合、子どもの自閉症リスクが高まる。

 

<必要量/日>

・18歳以上の男女5.5μg、妊婦7μg、授乳期8μg。

骨粗鬆症の予防には、1日あたり10〜20μg。

・耐容上限量100μg。

 

<不足のリスクが高い人>

・日光を避けている人、高齢者、肥満者。

・乳幼児:ビタミンDの含有量が少ない母乳育児や、 極度に紫外線を避けてしまうことなどで不足。

 

<日光浴>

・日光(紫外線B波)に当たることにより、体内で生成される。

・週に2日以上、1日に10−15分日光を浴びれば良い。

・日光を30分浴びると、ビタミンDを10000~20000IU生成する。

 

<食品>

・魚類、キクラゲ、キノコ類など。

 

<過剰症>

・耐容上限量(100μg/日)を上回るビタミンDの長期摂取は健康への有害な影響を及ぼすリスクがある。

・重症化するとカルシウムの血中濃度を上昇させ、血管や組織の石灰化から心臓、血管、心臓などが障害されることがある。

・食欲不振、体重減少、多尿、不整脈など。

高カルシウム血症、腎臓障害、軟組織の石灰化、成長障害、筋緊張低下、嘔気、食欲不振、腹痛、便秘、下痢(2008-田口)。

 

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イワシやサンマ1尾で約15µgになるので、魚を取り入れた食事を心がけていればあまり不足することはないかと考えられます。

また、過剰摂取は、バランスの良い適度な食事では心配いらないでしょう。

サプリメントなどを多く摂取している人は、どれくらい摂取しているかを確認しておく必要があります。

 

参考文献

・水落和也:骨関節疾患-関節リウマチ-、総合リハ35(10)、2007.

・田口素子:適切な栄養摂取の必要性、臨床スポーツ医学25(臨)、2008.

・宗圓聰:骨粗鬆症の治療、臨床スポーツ医学25(3)、2008.

・佐久間真由美:骨粗鬆症の疫学-発生頻度-骨折発生率とその特徴、臨床スポーツ医学25(3)、2008.

 

 

 

 

 

 

・ヘルシーパス:No7163ビタミンの過剰摂取、2015

 

 

・ヘルシーパス:No7220いまさら聞けないシリーズ ビタミン D 1 、2017

 

 

 

 

・ビタミンDが肝臓がん抑制 血中濃度比較で判明、2017